
ソフトバンクグループの経営の実態(12)
ソフトバンクグループが9月中間連結決算を発表した11月11日、アメリカで金融市場を震撼(しんかん)させる一大スキャンダルが起きた。米国の暗号資産(仮想通貨)交換所大手のFTXトレーディングの経営破綻だ。そのFTXにソフトバンクグループ傘下の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が投資していた。なぜ投資のプロであるはずの孫正義会長兼社長は「落とし穴」にはまったのか。
FTXは1992年生まれのサム・バンクマンフリード氏が2019年創業した暗号資産の交換所だ。暗号資産のブームに乗り急成長し、21年には米経済誌が同氏の保有資産は265億ドル(約3兆7000億円)に上ると試算するなど「若きビリオネア」として、もてはやされた。
しかし、FTXは11月11日に米連邦破産法11条を申請して経営破綻した。FTXの債権者は100万人を超え、160億ドル(約2兆2000億円)とされる顧客からの預かり資産の大半が消える可能性が大きい。
「エンロンよりもひどい…」
バンクマンフリード氏の退任後に最高経営責任者(CEO)を引き継いだ弁護士のジョン・レイ氏は裁判所に提出した書類のなかで、自身の40年にわたる企業再生の経験からして「FTXほどひどい状況をみたことがない」と記した。
レイ氏によるとグループ会社の大半で取締役会を開いた形跡がなく、預かり資産の管理もずさんで社員の不動産購入などに私的な不正流用が横行していた。企業統治が全く機能せず、信頼できる財務情報が欠如していたという。
レイ氏は01年に経営破綻したエネルギー大手のエンロンの精算を手掛けたアメリカの企業再生分野で著名な弁護士だ。FTXは巨額粉飾決算で破綻したエンロンよりもひどい惨状という…
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