
A介さん(42)は、ある会社の総務部の課長です。部下で契約社員のB子さん(36)の在宅勤務の働き方に違和感を持っています。
現在、同社は原則として社員の在宅勤務を認めていません。新型コロナウイルスの感染拡大で外出自粛の要請があった際、臨時措置として在宅勤務をした時期はありました。でも今は原則、全員出勤です。
ただし、同居の家族がコロナに感染した場合など、本人は仕事ができる状態でも出勤できない場合は、上司の承認を条件に在宅勤務を認めています。
B子さんには小学校低学年の子どもがいます。先日、子どもがコロナ陽性になったと会社に連絡がありました。でもB子さんは陽性ではないとのことで、在宅勤務の希望がありました。
B子さんの業務は在宅でもできるものでしたので、A介さんはB子さんの自宅に会社のパソコンを届ける手配をしました。
在宅勤務の始業と終業時間
同社では在宅勤務の勤務時間は出勤時と同じで始業は9時、終業は17時30分です。しかし、在宅勤務の初日、B子さんは「今日は16時で終わります」と16時の直前になって、チャットでA介さんに連絡してきました。A介さんは会議中でメッセージを確認することができず、気付いた時にはB子さんは勤務から離れた後でした。
A介さんはB子さんに「在宅勤務でも勤務時間を自由に決めてよいわけではありません。出勤時と同様に、早退する時は事前に連絡するだけではなく、承認をとってください」とメッセージを入れました。
しかし、その翌日、始業時刻になってもB子さんから業務開始の連絡がありませんでした。午後になっても連絡がないためA介さんは心配になり、携帯に電話をかけましたが、応答はありません。夜になって、B子さんからA介さんの携帯電話に「自分もコロナ陽性になったので、しばらく休みます」というメッセージが入りました。
結果として、その日のB子さんは無断欠勤となりましたが、A介さんは…
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特定社会保険労務士
大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/