
「私ども経団連の意見を反映していただき、ありがとうございました」。岸田文雄首相が原発の新増設や運転期間の延長など原子力政策の見直しを指示し、経済産業省がこれらを盛り込んだ行動計画案をまとめた。同案を基本的に了承した経産省の審議会では、原発推進の産業界代表から、こんな本音が飛び出した。
今回、経産省がまとめた行動計画案を議論し、了承したのは経済産業相の諮問機関「総合資源エネルギー調査会」の「原子力小委員会」だ。同省が選んだ委員の大半は原発推進の産業界代表や原子力が専門の学者などだ。
11月28日に行われた会合では、経産省資源エネルギー庁の担当課長が「アクションプラン」と呼ぶ行動計画案を資料とともに説明。その後、それぞれの委員が意見を表明した。
行動計画案は原発の新増設・リプレース(建て替え)の推進と既存原発の運転延長を可能とする新ルールが盛り込まれた。いずれも経団連や電力会社など産業界が求めていた内容だ。
「経団連の意見を反映してくれた」
経団連の小野透氏(日本製鉄グループの日鉄総研常務)は「私ども経団連の意見を反映していただき、ありがとうございました。今回のプランは革新炉開発を推進するという点で、震災後から停滞する原子力政策を大きく前に進めることになる点を評価したい」と述べた。
大手電力会社で組織する電気事業連合会の松村孝夫氏(関西電力副社長)は「早期の再稼働と既設炉の最大限の活用を実現していきたい。本日提示いただいた内容は原子力を持続的に活用し、電力の安定供給に貢献するための重要な論点と受け取っている」と、運転期間の延長などを歓迎する意向を示した。
原発推進の学者からは「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)の達成を目指す以上、原発の増強は不可避だ。既存原発の最大利用と、廃炉された炉の次世代革新炉への建て替えはたいへん重要になる」(竹下健二・東京工業大理事副学長特別補佐)など、行動計画案を支持する声が上がった。
明確な反対はただ一人
行動計画案に明確に反対したのは、NPO法人・原子力資料情報室事務局長の松久保肇氏ひとりだった。松久保氏は…
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