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次期日銀総裁に期待する「黒田緩和の検証と説明責任」

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
日銀の黒田東彦総裁=衆院財務金融委員会で2022年11月2日、竹内幹撮影
日銀の黒田東彦総裁=衆院財務金融委員会で2022年11月2日、竹内幹撮影

 次期日銀総裁の人事が近く決まる。黒田東彦総裁の任期は2023年4月8日までである。次期総裁の有力候補として、現副総裁の雨宮正佳氏(日銀出身)と、前副総裁の中曽宏氏(日銀出身、現在は大和総研理事長)の名前が挙がっている。

2%を超えて物価上昇は続いている

 いずれの人物が就任したとしても、現在の「黒田緩和」の見直しを進めることが主要な仕事になるだろう。消費者物価はすでに前年比3.6%(10月、除く生鮮食料)まで上がっている。目標の2%を大幅に超えており、12月(23年1月発表)には4%超になることもあり得る。

 少し前まで、黒田総裁は「物価上昇は一時的」と言っていた。ところが、22年4月に2%を上回って以降、もう半年間も物価上昇率は高まり続けている。23年1月から政府の物価対策によって、エネルギー価格が押し下げられるが、それがなければ、23年前半にかけて物価上昇率はさらに高まっているはずである。

 こうした状況下で、次の日銀総裁は物価上昇について総括的な検証を行ってしかるべきだ。いや、積極的に検証を行い、説明責任を果たせる人物でなければ、日銀総裁を務めるべきではないと筆者は考える。物価2%を上回っている状況をあえて放置し、日米金利差が広がることを容認していては、日銀は「円安放任」だと言われても仕方がない。

 また、良い物価上昇のためには賃上げの促進が必要だというのなら、それを日銀の政策で…

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。