
会社員のA太さん(32)は共働きの妻(30)との間に2歳の子どもがいます。妻は今年3月末で育児休業を終え、現在はフルタイムで働いています。昨年1年間、妻は育児休業を取得したため会社から給料・賞与の支払いはありませんでしたが、育児休業給付金を受給していました。そして今年の年末調整で、驚くことがありました。
昨年の年末調整の際、A太さんは総務部のB子さんから「A太さん、奥さんは復職されましたか?」と聞かれました。
A太さんの子どもは昨年10月に1歳になっていましたが、保育所に入所できず、妻が育児休業を延長していました。そのことを伝えると、「それなら配偶者控除を受けることができます。奥さんを扶養家族として申告してください」と言われました。そのように申告すると、これまで2万円程度だった年末調整の税金の還付が、4万8000円も還付されました。
ショッキングな給料明細
それから1年が経過し、今年も年末調整の時期を迎えました。A太さんはB子さんから再び「奥さんは復職されましたか? 復職されたなら、扶養家族の登録が残っているので、扶養家族から外しておきますね」と言われました。
しばらくして12月分の給料明細を見ると、A太さんに年末調整の還付はなく、年末調整の所得税徴収額の欄に1万8000円と記載されていました。これまでA太さんは年末調整でいつも税金の還付を受けていたので、所得税を追加で引かれることにショックを受けています。
会社員の場合、毎年の年末調整で、1年間の収入に対応する所得税額を計算します。そして月々の給料から差し引かれている所得税額と突き合わせをして精算することになります。
年末調整の際、(1)扶養家族がいる(2)生命保険料などの保険料を支払っている(3)大学生の子どもの国民年金保険料を支払っている(4)住宅ローンの支払いをしている――などの場合、会社に申告することで一定額が控除されます。扶養家族とは給与所得者と生計が同じで、給与収入の場合は…
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特定社会保険労務士
大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/