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「新幹線脱線と豪雨被害」試される日本の鉄道網

土屋武之・鉄道ライター
地震により白石蔵王駅近くで脱線した東北新幹線の車両=2022年3月17日午前6時47分、和田大典撮影
地震により白石蔵王駅近くで脱線した東北新幹線の車両=2022年3月17日午前6時47分、和田大典撮影

 日本は自然災害が多い国であり、大地震や集中豪雨が起きれば鉄道にも大きな影響がある。2022年も災害と鉄道の関わりについて考えさせられる出来事がさまざまあった。年の瀬ということで振り返ってみたい。

地震で東北新幹線が脱線

 今年3月16日の深夜に起きた福島県沖地震(マグニチュード7.4)では、福島―白石蔵王間を走行中だった東北新幹線「やまびこ223号」が脱線した。地震が起き、営業中の新幹線が脱線事故にまで至ったのは、上越新幹線が脱線した04年の新潟県中越地震以来のことだ。

 こうした事故が起きると、「新幹線が脱線した」という事実のみを強調し、センセーショナルに報じるメディアもある。だが現在の新幹線の地震対策は「脱線したとしても車体は転倒させない」が基本方針だ。

 もちろん脱線しないに越したことはない。だが脱線後も列車を転倒させないよう車体を維持できれば、人的被害を最小限にとどめられる。鉄道の世界では「脱線は究極のブレーキ」という言葉もある。大惨事を防ぐにはまず列車を止めること。脱線も想定した上でいかに人命を守るかが重要だ。

過去の大地震を教訓に

 このJRの方針は、過去の大地震での経験が教訓になっている。

 1995年の阪神・淡路大震災では、山陽新幹線の高架橋が崩落するなど大きな被害が出た。地震によ…

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鉄道ライター

1965年、大阪府豊中市生まれ。大阪大学で演劇学を専攻し、劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。出版社勤務を経て97年に独立し、ライターに。2004年頃から鉄道を専門とし、雑誌「鉄道ジャーナル」のメイン記事などを担当した。東日本大震災で被災した鉄道路線の取材を精力的に行うほか、現在もさまざまな媒体に寄稿している。主な著書に「ここがすごい!東京メトロ」(交通新聞社)、「きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)など。