熊野英生の「けいざい新発見」 フォロー

黒田日銀「残り2回の決定会合」サプライズはまだある

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
金融政策決定会合後に記者会見する日銀の黒田東彦総裁=2022年12月20日(代表撮影)
金融政策決定会合後に記者会見する日銀の黒田東彦総裁=2022年12月20日(代表撮影)

 日銀は12月20日の金融政策決定会合で、長期金利の変動幅の上限を0.25%程度から0.5%程度へと広げた。長期金利が0.5%まで上昇することを容認するものだ。黒田東彦総裁は記者会見で「これは利上げではない」と述べたが、金融市場はこれを、事実上の利上げだと受け止めた。

 これまでの会見で黒田総裁は「利上げは全く考えていない」と宣言してきた。だから、多くの人は変動幅の上限を引き上げることもしないと理解していた。もし「これは利上げではない」とするならば、今後も変動幅の上限を、0.5%から0.75%、あるいは1%まででも広げることができる。それでも日銀としては「利上げではない」のだ。

 このように考えると、論理を大きく飛躍させて、日銀はいつでも、いかようにでもイールドカーブ・コントロール政策を変更できてしまう。そうした意味で、12月の決定会合で日銀が行った見直しは金融市場に大きなショックを与えた。

「円安効果」は捨てたのか

 長期金利の上昇を日銀が容認すると、為替レートは円高方向に振れる。筆者はこれまで、黒田総裁は円安を放任して輸入物価を押し上げる効果を高め、その圧力で国内物価を上げるつもりだとみていた。だから、黒田総裁は円安放任を見直すことはないと考えていた。

 しかし、その見方は間違っていた。12月の政策変更は、黒田総裁がもはや円安を当てにしないことを宣言したようなものだ。賃上げによって物…

この記事は有料記事です。

残り970文字(全文1568文字)

第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。