
A太さん(44)は従業員50人ほどの機械部品製造卸の中小企業で総務と経理の仕事をしています。同社は従業員の高齢化が進み、半数以上が50代以上です。A太さんは社長のBさん(58)から「20代か30代の若い人たちを中途採用してほしい」と言われ、採用活動を始めました。ところが、ほとんど応募がなく、頭を抱えています。
限られた予算の中で、A太さんは求人広告を出す媒体をこれまでと変えてみました。アットホームで働きやすい職場であることをアピールする文面も入れてみたりしましたが、反応がありません。
A太さんが他社の募集要項と比べてみたところ、わが社の給料は見劣りしません。ただし、休日数が明らかに少ないのが、人が集まらない原因と考えられました。
B社長にその旨を伝えましたが、「わが社はお客様第一でやってきた。営業日数を減らすなんて考えられない」と言われてしまいました。
休日数に違法性はなくても
A太さんの会社の勤務時間は午前8時から午後5時15分までです。昼休み1時間のほか、午前10時と午後3時に休憩が15分ずつあり、1日の労働時間数は7時間45分です。年間の休日数は100日です。日祝は休みですが、完全週休2日制ではなく、月1~3回の土曜出勤があります。
同社では1年間を平均して労働時間数を週40時間以下とする「変形労働時間制」という制度を導入しています。1日8時間労働であれば年間休日数は105日必要ですが、同社は1日7時間45分労働ですので、年間休日は96日あれば足ります。年間休日数100日は違法ではないものの、年間休日数が120日以上の会社もある中で、同社の勤務条件が見劣りするのは明らかでした。
A太さん自身も数年前に同社へ転職した際、休日数が少ないことが気になりました。ただし、家庭の事情で自宅から近い勤務先を探していたことから、転職を決めた経緯がありました。
実際に働き始めてみると…
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特定社会保険労務士
大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/