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孫正義氏が「思い出しても恥ずかしい」大失敗の後始末

山口敦雄・経済部
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長=東京都中央区で2019年11月6日、玉城達郎撮影
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長=東京都中央区で2019年11月6日、玉城達郎撮影

ソフトバンクグループの経営の実態(18)

 ソフトバンクグループに対し、スイス金融大手クレディ・スイス・グループが英国で提訴する構えを見せている。争いは、ソフトバンクグループの英国と米国の投資先2社が2021年に相次いで経営破綻したことが発端だ。ソフトバンクグループは欧州の金融大手と何をモメているのか。

 ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が主導する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は、投資先の新興企業の中に経営破綻した企業が出ている。その代表格が、英金融会社グリーンシル・キャピタルと米建設会社カテラだ。

 この破綻した2社への投資について孫氏は「名前を思い出すだけで恥ずかしくなる」と21年6月の株主総会で語るほどの大失敗だった。2社は別々の会社だが、ビジネス上の関係があり、グリーンシルがカテラに融資していた。

破綻した投資先2社

 グリーンシルはモルガン・スタンレーなど米銀大手に勤めていたレックス・グリーンシル氏が11年に英国で創業した金融ベンチャー企業だ。企業から売り掛け債権(取引先から代金を受け取る権利)を購入して資金を提供する業務を行っていた。

 ビジョン・ファンドは19年に同社に対し14億5500万ドル(約1900億円)を出資した。出資の後押しもあり、グリーンシルは急拡大した。だが、一部の企業への偏った融資やハイリスクの投資が失敗し、21年3月に経営破綻した。

 一方の米カテラは、電子機器の受託製造企業で最高経営責任者(CEO)を務めていたマイケル・マークス氏らが15年に設立した。前職の経験を旧態然とした建設業界に生かし、コスト圧縮を目指した。床や壁などの資材をロボットで一括生産することも行った。

 しかし、…

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経済部

1974年生まれ。明治学院大法学部卒、同大大学院経営学修士。ビジネス誌「週刊エコノミスト」編集部記者、毎日新聞出版図書第二編集部編集長、学芸部記者を経て現職。著書に「楽天の研究」(毎日新聞社)がある。