
会社員のA実さん(55)は、年末年始に故郷の四国に帰省し、同級生と久しぶりに再会しました。リタイアが視野に入る年代となり「老後」が話題になりましたが「公的年金はあてにならない」と考える人が多いようでした。話を聞くうちに、A実さんも年金制度の今後が不安になり「本当のところ、どうなのでしょうか」と相談に訪れました。
地元の友人たちは、もうすぐ孫が生まれたり、親の介護をしていたり、パートで家計を支えていたりと、さまざまですが、老後には漠然とした不安を抱える人が多い印象でした。
A実さん自身は、進学で故郷を離れ、その後は東京で生活しています。地元にいる高齢の親は年金を元に自立して生活しており、そのことには感謝していますが「自分たちの世代が老後を迎えるころはどうなっているのか心配です」といいます。
年金財政の安定化に「改革は続行中」
まず、年金制度の流れを振り返ってみましょう。
かつての日本は、子が老親を扶養する家庭がほとんどでした。しかし、戦後の高度成長で賃金労働者が増え、都市化・核家族化が進んだことに対応し、1961年にすべての人が加入する公的年金制度ができました。高齢になって働けなくなった人の生活を現役世代の国民全員で支える「賦課方式」の制度です。
こうして、A実さんの親のように多くの高齢者の生活は公的年金によって支えられています。年金給付額は年間58.9兆円(2022年度当初予算ベース)で、国内総生産(GDP)の約1割にあたります。
しかし、賦課方式では、少子高齢化・人口減少が進めば、保険料収入が減り、給付費が増えて、年金財政が揺らぐことになります。このため、年金制度をいかに安定的に…
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