
もしかすると「個人の判断ではありますが、マスクは原則不要です」などと言われる場面が出てくるのだろうか。
政府は新型コロナウイルスの感染症法の位置づけを、5月に季節性インフルエンザと同等の「5類」に変更することを決めた。それに合わせてマスク対策も緩和する、という岸田文雄首相の方針を聞いた時には「ええっ!」と思った。
当初は「屋内でもマスクは原則不要」との案が浮上していた。厚生労働省の感染症部会の議論を経て、「個人の判断に委ねることを基本とする」となったが、緩和のメリットとデメリットをどう判断したのかはわからない。
たとえ類型を変えても、新型コロナのオミクロン株の高い感染性は変わらない。感染が拡大すれば医療が逼迫(ひっぱく)し、死亡者が増えることも変わらない。
一方で、感染対策におけるマスクの有効性には一定のエビデンスがある。そもそも類型変更とマスク対策は別の話。単に個人に丸投げするとすれば、感染症法が求める発生予防やまん延防止に反するのでは?
政府は一体どういう科学的根拠に基づいて「原則不要」を打ち出そうとしていたのだろうか。安倍晋三元首相も菅義偉元首相も、小中高校の一斉休校や、感染が収束しない中で実施した旅行需要喚起策「GoToトラベル」など、科学的根拠のない対策を打ち出したことがある。ただ、その時は「お友達や取り巻きのあの人の意見を聞いたのだろう」ということが透けて見えた。
岸田さんの場合は、それさえわからない。どんな思惑があるのだろうか。
インフルエンザと同等でない
新型コロナは現在、感染症法で「新型インフルエンザ等感染症」に分類され、「2類相当」とされている。一方、5類に分類されているのは季節性インフルエンザや麻しん、エイズなどだ。
では、新型コロナが5類に分類されると何が変わるのか。まず、法律に基づく入院措置や感染者の自宅待機、外出自粛要請がなくなる。濃厚接触者への措置もなくなる。緊急事態宣言も出ない。
これらの中にはすでに実態にあわないものが確かにあるし、法に基づく…
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