
「異次元の少子化対策に挑戦する」。岸田文雄首相が1月4日の年頭記者会見でぶち上げた。金融政策の「異次元緩和」をほうふつさせ、インパクトが大きかった。
発言を受け、ニュース番組だけでなく、ワイドショーや情報番組も「少子化」を取り上げた。ある番組は「Z世代」と言われる20代の声を聞いた。「日本は子どもへの予算が諸外国より少なく、後れをとっている」と“普通の”少子化対策を求める男性や、「絶対必要だと思うのは賃上げと晩婚化対策」と話す女性がいた。
話題になっている書籍「母親になって後悔してる」(新潮社)を取り上げた番組があった。「母親である前に一人の人間です」といった女性たちの声が紹介された本だ。各番組が少子化問題をいろいろな観点から考えようとしていて、なんだか新鮮な感じを抱いた。
そして、1月23日の施政方針演説。岸田首相は「従来とは次元の異なる少子化対策を実現する」と表明した。柱は経済支援の拡充、子育てサービスの充実、働き方改革だ。翌日朝刊は大手5紙が1面トップで扱った。いずれも財源が課題だと問う一方、首相の狙いは「内閣支持率アップ・政権浮揚だ」としている。なんだ、そっちですか、という残念な思いがぬぐえない。
未婚化問題こそポイント
「『夫婦が子どもを持たなくなった。だから子育て支援が必要だ』というのは、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)です」。昨年12月、東京都内で開かれた少子高齢化に関するシンポジウム。天野馨南子(かなこ)・ニッセイ基礎研究所人口動態シニアリサーチャーが激しく語ったのを想起した。
少子化問題でよく取り沙汰される合計特殊出生率。日本は近年1・3~1・4台だ。天野氏は「合計特殊出生率は15~49歳の全女性、つまり未婚女性と既婚女性の出生率を足した統計だ。夫婦が平均1・3人しか子どもを持たないということではない」と解説する。
初婚同士の夫婦が最終的に持つ子どもの数は1970年以降、約2人を維持していると指摘。一方、2021年の出生数は、70年に比べ42%に減っている。従って、「夫婦が子どもを持たなくなったのではない」「カップルなくして出生なし」。少子化対策に最も有効な手段は「未婚化問題の解決」であると、統計を駆使して説明した。
若者が希望する夫婦と…
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