
会社員のA夫さん(59)は、年金暮らしの母親(80)と同居しています。母親は税法上の扶養となるため、A夫さんは所得税や住民税が軽減されています。しかし、今後、母親が介護保険サービスを利用した場合、利用料の軽減措置が受けられないとわかりました。A夫さんは「親子で世帯を分ける世帯分離をした方がよいのでしょうか」と相談に訪れました。
収入の少ない家族を支える「扶養」
扶養とは、家族の生計を主に担う人(扶養者)が、配偶者や子、親など、収入の少ない家族を経済的に支えることです。同じ扶養でも、税と社会保険とでは、扶養にできる収入や所得要件が異なります。
税法上の扶養とは、配偶者や子、親などの年間の合計所得金額が48万円以下の場合、扶養者の所得から一定金額を差し引く(控除)ことができる制度です。
同居していなくても、生活費を仕送りしていれば「生計を一にする」と扱います。子や親などは扶養控除、配偶者は配偶者控除の対象となります。
高齢の親で、収入が公的年金だけの場合は、収入から公的年金等控除額(65歳以上は最低110万円)を差し引いた所得金額が48万円以下であれば扶養にできます。公的年金でも、遺族年金や障害年金は収入として扱いません。
また、親が公的年金の収入に加えて、パート収入がある場合は、それぞれの収入に対しての所得控除後の金額で判断します。
A夫さんの母親は、老齢年金が78万円、遺族年金が76万円です。年金収入とみなされるのは78万円だけで、公的年金等控除を差し引くと扶養対象になります。
扶養控除額は、69歳未満は「一般扶養親族」となり38万円です。70歳以上は「老人扶養親族」となり…
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