
五輪汚職・KADOKAWAの報告書(下)
角川歴彦前会長らが贈賄罪で起訴された出版大手KADOKAWAの東京五輪を巡る汚職事件では、他の大手出版社A社が途中で資金提供を断り五輪スポンサーを辞退したことが報道で明らかになっている。KADOKAWAのガバナンス検証委員会の調査報告書でもA社の辞退の件が触れられている。なぜA社は資金提供を断ったのか。
報告書によると、2016年10月に大会組織委員会の高橋治之元理事=受託収賄罪で起訴=から、KADOKAWAと大手出版社A社の計2社がスポンサーになる提案が示された。提案は高橋元理事の電通時代の後輩を通じてKADOKAWAに伝えられた。
提案には、スポンサー料とともに、元理事の後輩のコンサル会社に、KADOKAWAは7000万円、A社は3000万円程度の「コーディネートフィー」を支払う内容が盛り込まれていた。提案の内容はその翌月に、KADOKAWAからA社に伝えられた。A社は「検討する」と回答した。
KADOKAWAの社内では、知財法務部が贈賄リスクを指摘したが、担当室は契約に向けた手続きを進めた。17年5月には角川前会長、高橋元理事のほか、組織委元会長の森喜朗元首相が加わり料亭での会食が開かれた。会食にはA社も参加した。
A社は「スポンサー応募から撤退する」
ところが1年後の18年5月になってA社から「スポンサー応募から撤退する」との連絡がKADOKAWAにあった。KADOKAWAは19年4月、五輪スポンサーになる契約を正式に結んだ。出版業界は1社だけだった。
A社がなぜスポンサーを降りたか。KADOKAWAの担当室の責任者は、社内で次のように話していたという。
「A社は、表向きは会社の経営状況がよくないということで断った。ただ、その窓口の人の内々の気持ちとしては、この建て付けというものが非常に気持ち悪い。最後は本件を担当する役員が社長に、今回のことについてはどうしても気持ちが悪いところもあるし、会社のお金もあんまりないし、お断りしたいと思うんですけど、と言って、最終的に会社として降りることになった」
「建て付けが気持ち悪い」とは、元理事の後輩の会社への資金提供の問題とみられる。KADOKAWA社内では知財法務部が「贈賄…
この記事は有料記事です。
残り547文字(全文1493文字)