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星空の危機?市民科学者5万人が示した「光害」の深刻

青野由利・客員編集委員
地球に接近して青緑色に輝き、尾を伸ばすZTF彗星(すいせい)=静岡県富士宮市の朝霧高原で2023年1月25日午前3時、手塚耕一郎撮影(ノイズ処理のため8枚の画像を合成)
地球に接近して青緑色に輝き、尾を伸ばすZTF彗星(すいせい)=静岡県富士宮市の朝霧高原で2023年1月25日午前3時、手塚耕一郎撮影(ノイズ処理のため8枚の画像を合成)

 冬は星々が美しく見える季節。都会の夜空でもオリオン座や冬の大三角形がさえざえと輝き、宇宙の深淵(しんえん)を感じさせてくれる。

 都会を離れ空が暗い場所に行くと、星座がわからなくなるほどの満天の星に圧倒されることもある。

 でも、このままいくと、そんな豊かな星空が見られなくなってしまうかもしれない。

 そう聞いて、宇宙の終わりの「ビッグリップ」(注)を思い浮かべた人はマニア過ぎ。今回は、もっと身近な「光害」の話だ。

 都市を中心に人間活動がある場所では夜空は真っ暗にはならず、ぼんやりと明るい。人工的な光が大気で散乱することによって生じる現象で、これが星空観測を邪魔する光害となっている。

環境省は「光害対策ガイドライン」

 人工的な照明による光害は1970年代から指摘され、それなりに対策も取られてきた。国際的なガイドラインがあり、日本でも環境省が「光害対策ガイドライン」を策定している。

 ところが、米サイエンス誌に先月掲載された論文によると、ここ10年ほどで夜空の光害が急増しているという。これが続いて、星空が見えなくなるとすれば天文学者でなくても残念だ。いったい、何が起きているのだろうか。

 論文をまとめたのはドイツと米国のチーム。ただし、データを集めたのは世界の5万人に上る一般市民「シティズン・サイエンティスト(市民科学者)」だ。欧米からの参加者が中心だが、アジアの参加者の半数は日本からというのも興味深い。

 市民科学者は2011~22年に「Globe at Night(夜の地球)」と名付けられたウェブ上のツールを使い、自分の目で見た星空の様子を報告、これを基に夜空の明るさを判定した。日本語のページもある。

 そこから浮かんだのは、夜空の明るさは平均で毎年約10%ずつ増してきたということだ。特に北米の増加が大きい。この傾向が続くと8年足らずで明るさは2倍に。今、250個の星が見える場所で生まれた子どもが、18年後に大人になった時には100個未満の星しか見えなくなる計算だと…

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客員編集委員

東京生まれ。科学ジャーナリスト。好きな分野は生命科学と天文学。著書に「インフルエンザは征圧できるのか」「宇宙はこう考えられている」「ゲノム編集の光と闇」(第35回講談社科学出版賞受賞)など。20年日本記者クラブ賞受賞