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預金6000万円の67歳「今から不動産投資」のリスク

岩城みずほ・ファイナンシャルプランナー
 
 

 A郎さん(67)は同い年の妻と夫婦2人暮らしです。老齢年金に加え、夫婦それぞれパートで働いていますが、収入では毎月の支出がまかなえず、不足分は貯蓄を取り崩しています。このところの物価上昇で毎月の赤字が膨らんでいるのが悩みで、知人から「収入を増やすには不動産投資が手っ取り早い」と勧められて投資セミナーに参加しました。しかし「本当に収入が増やせるのか」と不安になり、相談に訪れました。

不動産サブリース「安易な期待」には用心

 A郎さん夫婦の年金手取り額は月17万円、パート収入はA郎さんが月7万円、妻は月4万円で、夫婦の収入は計月28万円です。一方、支出は月38万円で、不足分の10万円はA郎さんの貯蓄から取り崩しています。A郎さんの資産は約6000万円。全額が預貯金で、運用はしていません。

 参加した投資セミナーでは、「サブリース契約」を前提に、空室リスクが低い都心の賃貸マンションを購入して、オーナーとなることを勧められました。

 サブリース契約とは、不動産管理業者(サブリース業者)がオーナーに代わって、物件を一括管理し、空室でも家賃保証するものです。オーナーにとっては管理の手間がなく、安定した賃料収入が入るのがメリットとされ、「不労収入が得られる」と投資セミナーが活発に開催されています。

 しかし、契約期間中や更新時に、業者から一方的に賃料を減額されたり、解約されたりするトラブルも多いようです。また、入居者が替わる際の原状復帰や大規模修繕費用は、原則オーナー負担となります。物件の実勢価格が大きく下落したり、売却したくても売却できなかったりするリスクもあります。

 「不労収入」を安易に期待して、不動産投資に手を出すのは…

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ファイナンシャルプランナー

CFP認定者、社会保険労務士、MZ Benefit Consulting 代表取締役、オフィスベネフィット代表、NPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、顧客本位の独立系アドバイザーとして、家計相談、執筆、講演などを行っている。著書に「結局、2000万円問題ってどうなったんですか?」(サンマーク出版)など多数。