
出産育児一時金の謎(2)
出産した人に給付する「出産育児一時金」が2023年4月から50万円と現行より8万円増える。これに伴い75歳以上が加入する後期高齢者医療制度が費用の一部を支援する仕組みも導入する。その負担の重さはどれぐらいだろうか。
「子育ては社会全体で支援」に転換
出産育児一時金は、加入する健康保険から出産した人に給付する。現在、子1人に対し42万円だが、出産費用が上昇しているため、23年4月に50万円に引き上げる。
一時金の財源は主に現役世代の保険料だ。ただし中身は健康保険によって違う。
加入する健康保険は働き方によって決まる。会社員など雇い人やその家族は、被用者保険に加入する。大企業の社員らが加入する健保組合▽中小企業の社員らが加入する協会けんぽ▽公務員らが加入する共済組合――がある。
自営業者やフリーランス、無職の人は国民健康保険(国保)に加入する。国保には、自治体が運営する市町村国保と、医師や美容師など業種ごとに組織する国保組合がある。
そして75歳以上になると、被用者保険や国保から後期高齢者医療制度に移る仕組みだ。
では、出産育児一時金の財源はどうなっているのか。
被用者保険はそれぞれの保険料だけでまかなっている。国保は公的資金が一部入る。市町村国保は保険料が3分の1で地方交付税が3分の2、国保組合は保険料が4分の3で国庫補助が4分の1だ。
これに対し、後期高齢者医療制度は出産育児一時金の負担が全くない。
22年の出生数は、統計開始以来、初めて80万人を割り込んだ。国の推計より11年も早い。政府は、少子化が危機的状況にあり「子育ては社会全体で支援する」という意味から…
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