
超党派「原発ゼロの会」の指摘(下)
「シンプルだった原子力基本法が原子力推進法になってしまっている。何があっても国が原子力を優先し、保護するという話だ。こういう法案を国会の意思で決めてしまってよいのか」
原子力政策に詳しい龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は3月2日、超党派の国会議員らで作る議員連盟「原発ゼロ・再エネ100の会」の会合で、岸田政権が進める原発政策の見直しにこう懸念を表明した。
岸田政権は原子力基本法や電気事業法などの改正法案を今国会で成立させることを目指している。原子力基本法が推進法に変わるとは、どういうことなのか。
原子力基本法は1955年、日本の原子力政策の「憲法」として、平和利用に限り原子力を用いることを定めた。東京電力福島第1原発の事故後には「国際的な基準を踏まえ、国民の生命、健康や財産の保護などや我が国の安全保障に資することを目的とする」など、安全重視の方針を強化した。
今回、岸田政権は(1)原発の活用で電力の安定供給と脱炭素社会の実現に向け、必要な措置を講ずる(2)国民の原発に対する信頼を確保するために必要な取り組みを推進する――ことを「国の責務」として、基本法の改正案に明記。国が「原発の維持・開発に必要な産業基盤を維持、強化する」ことなども盛り込んだ。
この点について大島氏は「いったん基本法に入ってしまうと、これを前提に政策が作られることになる。電力自由化や再生可能エネルギーの普及などで原発が衰退したとしても、原発をやらなくてはいけなくなる。基本法が推進法となることを懸念する」とした。
「国民生活に深刻な影響も」
原子力基本法の改正については、原子力の専門家として内閣府の原子力委員会の委員長代理(2010年1月~14年3月)を務め、現在は長崎大学核兵器廃絶研究センター副センター長の鈴木達治郎氏も3月9日の同会で同様の懸念を表明した。
鈴木氏は「(原子力は)将来いろんなことが起こり得るので…
この記事は有料記事です。
残り884文字(全文1705文字)