
モンキチョウ3月2日、モンシロチョウ3月6日、ナミアゲハ3月8日、ウグイス3月8日、サクラ3月13日――。
これは今年、私が勝手に観測した「初見」「初鳴き」「開花」の記録だ。たまたま気づいただけなので、データとしての価値はないが、「今年は春が一度にやって来た?」と感じさせる生き物のメッセージだ。
植物の開花や鳥の初鳴きなど生物の季節的反応を調べる「生物季節観測」は、気象庁が1953年から70年近く全国の気象台や測候所で実施してきた。それによるとモンシロチョウ初見の平年は横浜で4月6日、鹿児島で3月3日、札幌で5月4日。ウグイス初鳴きの平均は横浜3月18日、鹿児島3月4日、青森4月21日。
やはり今年は例年より早そうだが、気象庁の記録は2020年までしかない。植物34種目、動物23種目あった観測対象を21年にサクラ開花など6種目9現象に大幅縮小したからだ。都市化で観測がむずかしくなったためとはいえ、残念な話ではある。
市民参加型の「生物季節モニタリング」
ただ、別の方法で継続する試みがある。国立環境研究所(国環研)が試行する市民参加型の「生物季節モニタリング」だ。
気象庁がやめてしまった対象を含めタンポポの開花、ツバメの初見、ヒバリの初鳴きなど植物32種目、動物34種目を選び、市民に観察してもらう。歴史ある観測記録の継承を目指すプロジェクトだ。
参加希望者は国環研の事務局に登録し、気象庁の観測マニュアルを利用して観測する。観測場所を相談して決めることもできる。
市民調査員は22年10月時点で40都道府県の299人。それが今年3月7日時点で321人に増えた。定年退職後のシニアや小中学生などが参加するが、地域に偏りがあり、青森、広島、大分、熊本、宮崎の5県はゼロ。九州が手薄だ。
「日本全域をカバーするために、都道府県ごとに数地点、少なくとも1地点はほしいところです」。国環研の担当で生態学が専門の…
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