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社会保険加入は損? 働き方を変えた37歳パートの結論は

井寄奈美・特定社会保険労務士
 
 

 A子さん(37)は従業員200人の機械部品メーカーで検品業務を担当するパートタイマーです。社会保険料の負担をめぐり、昨秋から働き方を変えましたが、予想より負担が大きく悩んでいます。

 2022年10月1日から従業員101人以上の企業は、パートの短時間労働者も週20時間以上働くなど一定の条件を満たすと、社会保険への加入が義務付けられました。

 A子さんは9月末まで午前9時から午後3時まで、1日5時間、週5日働いていました。時給は900円です。A子さんは夫の扶養家族になっており、社会保険料の負担はありませんでした。

 勤務先で社会保険に加入すると自分の手取りが減るだけではなく、夫の会社から支給される月1万5000円の家族手当もなくなり、世帯収入が減ってしまいます。A子さんは「社会保険に入りたくない」と考えました。

 会社は「手取りが減るので社会保険に入りたくない」と考えるパートに二つの選択肢を示しました。(1)勤務時間を1時間延長し午後4時まで(週25時間から週30時間勤務)とし、実質の手取り額を増やす(2)勤務日数を減らし、週20時間未満とし社会保険に加入しない――のいずれかを選ぶというものでした。

 A子さんは勤務時間を減らし、減った時間に他社で働くことにしました。22年10月以降、今の会社では午前9時から午後4時まで1日6時間、週3日働き、空いた時間は食品スーパーで1日5時間、週2日のパート勤務を始めました。

予想より負担大きく

 A子さんは2カ所で働き始めて、想像よりも負担が大きいことに気づきました。今の会社の業務には慣れていましたが、毎日出勤しなくなったため、出勤日の業務量の予想がつきませんでした。

 ある時、A子さんの出勤日でない日に機械のトラブルが発生し、作業が止まってしまいました。A子さんの出勤日に未処理の業務が大量に残され、残業せざるを得ませんでした。

 他方、スーパーは勤務日数が少ないため、仕事も同僚の名前や顔もなかなか覚えられませんでした。誰に何を聞けばよいのか困惑することに…

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特定社会保険労務士

大阪市出身。2015年、関西大学大学院法学研究科博士前期課程修了。現在、大阪大学大学院法学研究科博士後期課程在籍中(専攻:労働法)。01年、社会保険労務士資格を取得。会計事務所勤務などを経て06年4月独立開業。井寄事務所(大阪市中央区)代表。著書に『トラブルにならない 小さな会社の女性社員を雇うルール』(日本実業出版社)など。http://www.sr-iyori.com/