
物価上昇圧力は4月以降も続きそうだ。民間調査機関の帝国データバンクが食品主要195社を対象にした価格改定動向調査によると、4月の値上げは5106品目に及ぶ。食料品に主導されたインフレは、当分の間、継続すると覚悟しておく方がよい。
日銀は物価上昇圧力を過小評価
エコノミストの間では、インフレ圧力は鈍化していくという見方が根強い。輸入インフレの要因になった円安は、米利上げが2022年3月に開始されたことで大きく進んだ。その直前にはロシアのウクライナ侵攻もあった。そうしたコストプッシュ要因が23年10月ごろにかけて一巡するとみるためだろう。
植田和男次期日銀総裁も、23年度半ばに物価上昇率が鈍化して、前年比2%を下回ってくるという見方を国会で述べていた。
だが、筆者は、日銀は物価上昇圧力を過小評価していると思う。23年度の見通しは上ぶれして2%を上回るとみる。
物価が上ぶれする圧力は(1)価格転嫁の継続(2)労働コストの上昇の二つによってもたらされるだろう。
食料品の値上げは、輸入コストの上昇を小分けにして何度も価格転嫁しようとしていることの表れだ。企業部門では、中小企業からの値上げ要請に応えるかたちで、しばらくの間は取引価格の引き上げが進む。一巡するとしても24年以降になるだろう。
春闘では予想外に賃上げが実現した。大手企業の正社員だけではなく、非正規労働者でも大幅な賃上げとなっている。今後、サービス分野では、労働コストの増加分を販売価格に転嫁していく動きが広がっていくだろう。
消費者も、賃上げや3年ぶりの年金給付額引き上げによって、価格転嫁を受け入れるようになるだろう。つまり…
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