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チャットGPT時代に考える「DXで伸びる」成長分野

熊野英生・第一生命経済研究所 首席エコノミスト
 
 

 対話型人工知能(AI)の「チャットGPT」が話題になっている。書こうと思っている本の仮タイトルと章立ての見出しを入力するだけで、ずらずらと文章が出てくる。下手なリポートよりも出来がいい。これではシンクタンクの研究員もそのうちいなくなってしまうと思った。

経営者に求められるセンス

 もっとすごいのはイラストの作成だ。こんな絵柄にしてほしいと、2~5点ほど要望を指示すると、それらしいイラストが提示される。これもイラストレーターの仕事を奪いかねないと感じた。

 多分、5年先の未来は、多くの技能労働者が仕事を失うだろう。特に、スキルが高くなくて、その人でなければできないというプロダクツ(生産物)が作れなければ、AIのプロダクツにその立場を奪われる。

 おそらく、経営センスの優れた経営者は、AIツールを使って、強烈に人員を削減して、人件費を大胆に減らすだろう。社内は余剰人員であふれることも起こり得る。

 経営者のもうひとつの仕事は、その余剰人員に何かもうかる仕事を新しく与えることだ。余剰人員の発生を恐れてAIツールを使わない企業は、いずれ淘汰(とうた)される。それを防ぐために、新しくもうかる仕事を考えるセンスが経営者には求められるということだ。

DXで伸びたギャンブル

 今後、経営者が何の分野に人材を配置すれば、企業が成功するのかを考えてみた。考えるための材料は、経済産業省の「第3次産業活動指数」を使ったランキング表だ。この統計は、サービス産業の業種ごとの活発度合いを指数化したもので、数値が大きいほど活動が盛んであることを示す。

 2018年の平均値に対…

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第一生命経済研究所 首席エコノミスト

1967年山口県生まれ。横浜国立大学経済学部卒業。90年、日本銀行入行。調査統計局などを経て、2000年、第一生命経済研究所入社。11年4月から現職。専門は金融政策、財政政策、金融市場、経済統計。