
会社員のA助さん(45)は独身で、現在の年収は約800万円です。ずっと賃貸住宅暮らしをしてきましたが、将来の引退が視野に入る年齢となり「持ち家があったほうがいいのでは」と考えるようになりました。
物件を探すと、東京都心の利便性の良い立地に気に入ったマンションが見つかり、購入を検討しています。一方で、老後資金作りも気がかりになっており「手持ちの資産を、住宅購入の頭金に振り向けるのか、株式運用で増やすことを重視するのかで悩んでいます」と相談に訪れました。
「65歳時点」の資産をシミュレーション
購入を検討しているマンションは1LDKで価格は4800万円です。A助さんは最近、親の遺産を相続して、現在の資産は約2500万円あり、投資信託の積み立て投資などで運用もしています。
A助さんは、二つの案を考えています。
案1は、資産運用をある程度優先するプランで、住宅ローンの頭金は約2割に抑え、資産運用を続けながらローンを返済していくものです。案2は、頭金を約4割に高めてローンの返済期間を短くし、完済後に本格的な資産形成に取り組むプランです。A助さんは「どちらにするか決めかねています」といいます。
住宅購入には、老後の居住費の負担を抑え、暮らしが安定するメリットがあります。しかし、住宅ローンの支払いと、老後資金の資産形成を同時に進める場合は、住宅ローンの組み方や物件の価格が適切であるかどうかを、慎重に考える必要があります。
そこで、A助さんの二つの案を検討していきましょう。
まず、案1からです。
一般に、住宅ローンを組む場合、頭金が借入金額の2割程度あれば、金利優遇があります。頭金を2割の960万円とすると、借入金額は3840万円です。借入期間は…
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