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老後の資産形成「無料セミナー」で保険商品勧められたら

岩城みずほ・ファイナンシャルプランナー
 
 

 会社員のA子さん(45)は老後のため資産形成をしたいと考え、ネットで見つけた無料のマネーセミナーに参加しました。セミナー後、ファイナンシャルプランナー(FP)から「個別のアドバイスを受けられます」と誘われました。予想もしない勧誘でしたが、その内容に戸惑ってしまいました。

 個別相談に参加したところ、FPから複数の保険商品を勧められたのです。A子さんは「結局、無料セミナーは商品を売ることが目的だったのでは」と疑心暗鬼になり、私のところへ相談に来ました。

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同じ5類に移行したことで、しばらく休止していたマネーセミナーが全国各地で再開しています。それだけに無料セミナーには注意が必要です。

手数料の高い保険商品は得策か

 A子さんのように老後の資産形成を考えるためには、(1)将来受け取れる公的年金をベースに、今後いくらためなければいけないのか考える(2)不足分を補うために、いつまで働くかなどのライフプランに沿って、税制優遇の大きい個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」や少額投資非課税制度「NISA」などを使って合理的な資産形成を行う――ことが必要です。

 保障と貯蓄の両方に手数料がかかる保険商品で資産形成を行うのは、予定利率の低い状況では合理的でありません。

 しかし、FPはA子さんに手数料の高い保険商品を勧めました。販売者が得る手数料は、契約者の支払う保険料や今後の運用成果から差し引かれるものです。この手数料が高い商品の方が販売者はもうかりますが、契約者の資産はその分増えていきません。両者には歴然とした利益相反があります。

 この無料セミナーの目的は保険商品を販売することだったのでしょう。保険に入りたい人が参加するなら理にかなっていますが、目的が老後の資産形成なら話は変わってきます。A子さんが受けたのは「アドバイス」ではなく、主催者が自らもうけるための…

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ファイナンシャルプランナー

CFP認定者、社会保険労務士、MZ Benefit Consulting 代表取締役、オフィスベネフィット代表、NPO法人「みんなのお金のアドバイザー協会」副理事長。金融商品の販売によるコミッションを得ず、顧客本位の独立系アドバイザーとして、家計相談、執筆、講演などを行っている。著書に「結局、2000万円問題ってどうなったんですか?」(サンマーク出版)など多数。