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政府と東電の反論は?「原発は安くない」これだけの試算

川口雅浩・経済プレミア編集長
東京電力が電気料金の計算で再稼働を織り込む柏崎刈羽原発=新潟県で2021年4月13日、本社機「希望」から
東京電力が電気料金の計算で再稼働を織り込む柏崎刈羽原発=新潟県で2021年4月13日、本社機「希望」から

原発の発電コストが安いは本当か(下)

 原発は本当に安いのか。東京電力の公表資料から原発の発電コストを試算すると、同社が市場から購入する火力などの電力コストを原発が上回る計算になった。それなら東電は原発を再稼働するよりも、市場から電力を購入した方が電気料金を安く抑えることができるのではないか。この点について政府や東電は何と反論するのか。

 6月1日から電気の規制料金を値上げした東電は、政府の電力・ガス取引監視等委員会などに料金の算定根拠となる各種データを提出している。その公表資料によると、東電は新潟県の柏崎刈羽原発6、7号機を再稼働し、年間119億キロワット時の電力を発電する想定で、原発にかかる費用の総額は4940億円としている。

 このため1キロワット時当たりの発電コストは4940÷119=41.51円と試算できる。東電が原発の電力を購入する契約になっている日本原子力発電と東北電力へ支払う「基本料金」を除くと、費用は4076億円なので、4076÷119=34.25円となる。

 東電は卸電力取引市場を通じて他社から購入する火力発電などの電力は同20.97円と公表している。これでは原発で発電するより、市場で電力を買った方が安くすむ計算になる。この計算式の妥当性を含め、東電に聞いてみた。

東電は「適切でない」と回答

 まず計算式について、東電は「4076億円には福島第1と第2原発などの維持管理コストも含んでいる。この金額を再稼働で織り込んだ119億キロワット時で割った34.25円は原発の発電単価を適切に評価するものではない」と回答した。

 この説明には正直、納得がいかない。東電は資料の中で「福島第1原発について、安定化維持のために経常的に必要となる費用を原価算入している」と明記している。それなのに4076÷119=34.25円の計算式が「適切でない」というのは、どういうことなのか。

 市場価格と比較し、「原発で発電するより、他社から電力を買った方が安いのではないか」という質問については、東電から明確な回答が…

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経済プレミア編集長

1964年生まれ。上智大ドイツ文学科卒。毎日新聞経済部で財務、経済産業、国土交通など中央官庁や日銀、金融業界、財界などを幅広く取材。共著に「破綻 北海道が凍てついた日々」(毎日新聞社)、「日本の技術は世界一」(新潮文庫)など。財政・金融のほか、原発や再生可能エネルギーなど環境エネルギー政策がライフワーク。19年5月から経済プレミア編集部。