
漢方ことはじめ
フォロー津田篤太郎 / 新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 鍼灸健康学科教授
2021年は「蘭学事始」を著した杉田玄白らが死体解剖に臨んでちょうど250年。江戸時代の医師たちは、外国語の知識ゼロ、西洋近代科学の知識ゼロの状態から、ヨーロッパの医学書を苦労して翻訳し、世に広めました。今は大学で西洋医学一辺倒の教育となり、私たちの先人たちが何者で、どんなことをしてきたかを知る機会はほとんど失われています。医療関係者の大半は英語の論文はすらすら読みこなせても、日本語の古い文献にはほとんど馴染みがないという有り様です。私たちの国の医療はどこからやってきて、どこに向かおうとしているのか——。連載の中で古い漢方の書物をひもときながら、新たな視点でこの問いの答えを探したいと思います。
連載記事 35件
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「雨ニモ負ケズ」にみる「ケア」の思想
漢方ことはじめ
新年度から大学の教員となり、自分と親子ほども年の違う学生さんと日常的に接するようになりました。東洋医学の難しい話をどうやっ…
2023年5月9日
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「ありふれた症状」をどう治すか
漢方ことはじめ
いつぞや、同年代ながら私にいつもいろいろ教えてくださる熊本の名医、加島雅之先生がとても面白いことをおっしゃっていました。 …
2023年4月11日
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アベノミクス後遺症に「漢方」が効く? ~日銀副総裁の語る東洋思想~
漢方ことはじめ
前回、「君子豹変(ひょうへん)す」という言葉について述べました(https://mainichi.jp/premier/h…
2023年3月14日
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師が自説を改めるとき
漢方ことはじめ
「君子豹変(ひょうへん)す」という言葉があります。 立派な人物は鮮やかなヒョウ柄のように考え方をガラリと変える、という意味…
2023年2月14日
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“冬の時代”のとば口に立つ漢方~昨年の私的三大ニュース~
漢方ことはじめ
2023年、年が明けました。皆さんは昨年一年をどのように振り返っておられるでしょうか? 私自身にとっては年々厳しくなる環境…
2023年1月10日
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治療の道のりを設計する「プログラム」と「レシピ」
漢方ことはじめ
クリスマスが近づいてきました。お子さんやお孫さんのプレゼント選びに腐心しておられる方もいらっしゃることと思います。 先日、…
2022年12月13日
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“不純物”の効用
漢方ことはじめ
日本にはさまざまな技能を持つ職人さんがいらっしゃいます。 ある時、パイプオルガン製作で世界的に有名な日本人についての、とて…
2022年11月8日
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日々の診療に「役立つ」研究と「役立たない」研究
漢方ことはじめ
医学は日々進歩し、次々に新しい病気の概念や治療法が登場します。漢方が専門だからといって、追いつく努力を怠ると、あっという間…
2022年10月11日
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中井久夫先生に教わったこと
漢方ことはじめ
先月8日に、神戸大学名誉教授で精神科医の中井久夫先生が亡くなられました。私が今の仕事をずっと続けていられるのは、中井先生の…
2022年9月13日
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細胞の「乗っ取り屋」と「三禁湯」
漢方ことはじめ
高校の生物の授業で「セントラル・ドグマ」という学説を習ったことを覚えていらっしゃるでしょうか。 日本語で「中心教義」と訳さ…
2022年8月9日
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治療の舵取りとそのリスク 症状の緩和か、根本から治すか
漢方ことはじめ
先般の参議院議員選挙では、「物価高対策」が大きな争点の一つとなりました。新型コロナウイルス感染症により世界全体で移動の制限…
2022年7月12日
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夏至の夜の夢 眠りと漢方
漢方ことはじめ
患者さんが「眠れない」と訴えるとき、たいていの医者、特に不眠症は専門外という医者はそっけない態度をとりがちです。多忙な医者…
2022年6月14日
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漢方と占いの怪しい?関係 孔子も尊んだ「易経」の思想
漢方ことはじめ
以前、ある学会から「漢方薬で抗生物質の使用量を減らせるか」をテーマに講演を委嘱されました。現代医学において、抗生物質は細菌…
2022年5月10日
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「不治」と「誤治」ーー漢方の失敗学
漢方ことはじめ
医療は神ならぬ人がやっていることですから、いつも良い結果を生むとは限りません。医療ミスや薬害といった話題はマスコミでセンセ…
2022年4月12日
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危機の季節の処方箋
漢方ことはじめ
寒さ厳しい季節がようやく終わりを迎え、草木が芽吹き花ほころぶ春がやってきたというのに、毎日流れてくるニュースは陰鬱な気分に…
2022年3月8日
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漢方医たちの休日 ~趣味は医業の敵か味方か~
漢方ことはじめ
現代のようにさまざまな娯楽がなかった江戸時代、医師たちは余暇をどのように過ごしていたのでしょうか。明治の文豪、森鷗外の著し…
2022年2月8日
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「おけらまいり」で疫病退散を願った先人たちの知恵
漢方ことはじめ
今回はお正月らしい話題をひとつ。 私の実家にほど近い八坂神社(京都市東山区)では、例年大みそかの深夜から元日の早朝にかけ、…
2022年1月11日
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漢方薬の名前に見る中華帝国の政治力学
漢方ことはじめ
医者の同僚に「漢方を教えてほしい」と頼まれたとき、最初のハードルになるのが「漢字の多さ」です。日本語を使う人なのに漢字が苦…
2021年12月28日
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長く生き残り続けていくために必要なものは何か
漢方ことはじめ
日本では、現代医学的治療も漢方薬による治療も同じ健康保険制度でカバーされます。ただ、このようなことが可能なのは世界でも珍し…
2021年12月14日
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なぜ「良薬は口に苦し」なのか ~薬の見かけ・匂い・味の意味~
漢方ことはじめ
「先生、患者さんから電話がかかっています」 外来の看護師が私に声をかけてくれました。先日、あるかかりつけの患者さんに処方し…
2021年11月23日
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免疫学者が新作能に書いた「五運六気」の謎
漢方ことはじめ
いまから5年前のある日、私はテレビに映っている能舞台にくぎ付けになっていました。 そもそも病といえるは 五運六気の乱れ…
2021年11月9日
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病は「気候」から 気候と健康の関係
漢方ことはじめ
10月は例年ノーベル賞のニュースが世間をにぎわせます。今年は大気中の二酸化炭素濃度が気候変動に与える影響を研究した真鍋淑郎…
2021年10月26日
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「聞く」ことの大切さ 伝統医学で重要視される“漠然とした”感覚
漢方ことはじめ
「聞香(もんこう)」という言葉があります。香りは嗅ぐものではなく「聞く」ものだ、という香道の考え方が表れている言葉です。漢…
2021年10月12日
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「分け隔てのない医療」のメリット
漢方ことはじめ
いま、新型コロナウイルス感染症は、ようやく“第5波”が収束の兆しを見せ、全国の新規感染者数が減少を続けていますが、濃厚な医…
2021年9月28日
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私たちはなぜ健康を保たないといけないのか 「養生」の論理と倫理
漢方ことはじめ
私が漢方を学んだ北里大学東洋医学研究所では、夏と冬の年2回、医学の歴史に関する講演会を催しています。普段、学会などに参加す…
2021年9月14日
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伝統が新しいものを生む瞬間 ~音楽と医学の対話に学ぶ~
漢方ことはじめ
先日、江戸浄瑠璃一中節の宗家、都一中氏とお話しする機会がありました。日本の古典音楽の第一線で活躍されている一中氏ですが、西…
2021年8月24日
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漢方医から見た”新薬登場”の舞台裏
漢方ことはじめ
先日、軽症の新型コロナウイルス感染症を適応症とする新薬「ロナプリーブ」が厚生労働省により承認されました。昨年10月、アメリ…
2021年8月10日
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疫病はどこからくるのか? 先人たちの頭を悩ませた難問
漢方ことはじめ
2021年6月、米食品医薬品局(FDA)は、天然痘治療のための新たな抗ウイルス剤を承認したと発表しました。40年以上前に絶…
2021年7月20日
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漢方のベストセラー・葛根湯の秘密
漢方ことはじめ
漢方についてあまりよく知らない人でも、「葛根湯(かっこんとう)」という薬の名前は耳にしたことがあるのではないでしょうか。風…
2021年7月6日
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パンデミックと闘う行政長官、医学史に偉大な足跡
漢方ことはじめ
今般の新型コロナウイルス感染症のパンデミックは1年を超えて長期化し、その間患者数が急激に増えては、自粛の強化や緊急事態宣言…
2021年6月22日