紙面より

歯列接触癖とは 顎、歯への負担でトラブル

福島安紀・医療ライター
  • 文字
  • 印刷

 上の歯と下の歯は、しゃべったり食べたりしていない時には離れているのが普通だが、中にはくっついたままの人もいる。「歯列接触癖(TCH)」と呼ばれるクセで、顎(がく)関節症や歯周病などさまざまな病気を招く恐れがあることが分かってきた。どう見分け、対処すればいいのか。

 「上下の歯は、食べ物をかんだり会話をしたりする時に瞬間的に触れ合うだけで、平均的な接触時間は1日17.5分程度です。顎(あご)の関節や筋肉にとっては、前歯で1〜2ミリ、奥歯で0.5〜1ミリの隙間(すきま)がある状態が最も楽なのです。ところが、TCHの人は上下の一部、または全部の歯が、日常的に接触してしまっているのです」。そう解説するのは、東京医科歯科大歯学部付属病院で顎関節治療部長を務める木野孔司さんだ。

 木野さんがこの癖に着目したのは、2000年ごろから東京慈恵会医科大と共同で、顎関節症に影響する要因を調べたのがきっかけだ。顎関節症は「口を大きく開けられない」「顎の周りが痛い」「口を開けると顎が鳴る」が主な症状で、成人の2人に1人が一生に一度は経験する。自然に治る人が多い一方、長期化し、うつ病などの精神疾患につながるケースもある厄介な病気だ。「かみ合わせ、頬づえ、歯ぎしりなどさまざまな要因を探ったのですが、統計学的に関係があると言えるのはTCHだけでした。顎関節症の患者の約8割にこの癖があり、発症や悪化につながっていたのです」と木野さんは話す。

 20代の会社員、香代子さん(仮名)は2カ月ほど前から口を開けると顎が痛み、こめかみの辺りの筋肉に疲れを感じるようになった。耐えられなくなり歯科に行くと、顎関節症でTCHもあると診断された。デスクワークが10時間を超える日が多く、職場の人間関係のストレスのためか、うつ病も発症していた。

この記事は有料記事です。

残り1807文字(全文2563文字)

福島安紀

医療ライター

ふくしま・あき 1967年生まれ。90年立教大学法学部卒。医療系出版社、サンデー毎日専属記者を経てフリーランスに。医療・介護問題を中心に取材・執筆活動を行う。社会福祉士。著書に「がん、脳卒中、心臓病 三大病死亡 衝撃の地域格差」(中央公論新社、共著)、「病院がまるごとやさしくわかる本」(秀和システム)など。興味のあるテーマは、がん医療、当事者活動、医療費、認知症、心臓病、脳疾患。