
どんな人でも、どんなに立派な生活をしていても、認知症になるときはなる。前回述べた通り、認知症の代表格アルツハイマー病には確実な予防法はないのである。それにもかかわらず、認知症の「予防」がメディアでは盛んに話題にのぼる。その「予防」というかけ声の裏には、「認知症になったら大変」という意識が透けて見える。そこに大きな問題がある。
認知症を危険因子(リスクファクター)という側面から考えてみたい。危険因子とは、病気を呼び寄せる要因で、逆に言えばこれに気を付ければその病気になりにくい、というものだ。例えば、消化器のがんでは、飲酒や喫煙が一般にこれにあたる。では認知症の危険因子とは何か。
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東京医療学院大学教授
うえだ・さとし 京都府生まれ。関西学院大学社会学部では福祉専攻で精神医学のゼミで学ぶ。卒後、朝日新聞に記者で入社したが、途中から内勤の編集部門に移され「うつうつとした」日々。「人生このままでは終われない」と、もともと胸にくすぶっていた医学への志向から1990年、9年勤めた新聞社を退社し北海道大学医学部に入学(一般入試による選抜)。96年に卒業、東京医科歯科大学精神神経科の研修医に。以後、都立の高齢者専門病院を中心に勤務し、「適切でない高齢者医療」の現状を目の当たりにする。2007年、高齢者のうつ病治療に欠かせない電気けいれん療法の手法を学ぶため、米国デューク大学メディカルセンターで研修し修了。同年から日本医科大学(東京都文京区)精神神経科助教、11年から講師、17年4月より東京医療学院大学保健医療学部教授。北辰病院(埼玉県越谷市)では、「高齢者専門外来」を行っている。著書に、「治さなくてよい認知症」(日本評論社、2014)、「不幸な認知症 幸せな認知症」(マガジンハウス、2014)、訳書に「精神病性うつ病―病態の見立てと治療」(星和書店、2013)、「パルス波ECTハンドブック」(医学書院、2012)など。
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