前回は日光のビタミンであるビタミンDがいかにミドルエージ世代の健康にとって大切な存在かについてお話ししましたが、生活習慣病から私たちを守ってくれるのはビタミンDに限りません。脳梗塞(こうそく)や認知症を予防する上で覚えておきたいビタミンのひとつに「葉酸」があります。葉酸は、胎児の先天性奇形のリスクを軽減するため妊娠初期に摂取するビタミンとして知られていますが、実はミドルエージ世代が気になる動脈硬化を予防し、各種疾病リスクを遠ざけるビタミンでもあるのです。

「ホモシステイン」をご存じでしょうか。「神経毒」とも呼ばれるアミノ酸の一種であるホモシステインは動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす因子でもあります。血液中にホモシステインの量が必要以上に増えると心臓の働きやがん細胞の発現、脳の神経組織に影響を与えることがわかっており、とくにパーキンソン病とアルツハイマー病の患者さんは血中ホモシステイン量が健常な人に比べて高いことが研究報告されています。動脈硬化を予防するとされる食べものはいろいろありますが、国内で行われた複数の大規模研究において、葉酸にもその効果があるとの報告がなされています。葉酸は、ほうれん草、枝豆、ブロッコリー、とうもろこしなどの食品に多く含まれ、ホモシステインを体内で体に必要な別の物質に変える手助けをします。加齢とともに体内で増え、心臓と脳の脅威となる「毒」を減らしてくれるビタミンですから、しっかり摂取したいものの、いくつか考慮すべき点があります(これは他の栄養素についても通じることです)。

 まず、葉酸を食材から吸収するためには、胃が健康でなければなりません。米国のボストン大とタフツ大による共同研究によると、胃酸分泌不足や胃酸(胃内)の酸性度が低い人(とくに高齢者)は、葉酸を含むビタミンの消化吸収率が著しく低下するそうです。吸収のためには十分に胃酸が分泌され、胃内の酸性度が一定以上を保っている必要があるのです。また、ピロリ菌感染による萎縮性胃炎によって、消化吸収率が4割まで下がるというデータもあります。

 より効果的に血中のホモシステイン値を下げるためには葉酸+ビタミンB12が有効ですが、B12も胃のコンディションによって吸収率が大きく変わってしまうビタミンです。胃酸の分泌量低下は40歳を過ぎると進み、少しずつ栄養素の吸収率も低下していきます。肉より魚や大豆などのあっさりしたものを好むようになってきたら要注意です。

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細川モモ

予防医療コンサルタント/一般社団法人ラブテリ代表理事

ほそかわ・もも 10代で両親が末期がん患者になったことから予防医療に関心をもち、以後7年間、サンフランシスコやニューヨーク、ロンドンに通い続け、大学や学会に定期的に参加。2009年春に、日本で“知るべき知識と得るべき機会を普及することで大衆の健康を守る” Pablic Health を普及させるため、医療・健康・食の専門家によるプロフェッショナルチーム「Luvtelli(ラブテリ) Tokyo&NewYork」を日本とニューヨークで発足させ、大学、病院、企業などと共同で研究、論文発表を続けている。特に先進国の中でも日本が深刻な状況を陥っている低出生体重児と不妊症の予防に力を入れ、「卵巣年齢共同研究プロジェクト」「高崎妊婦栄養研究」などの共同研究を実施してきた。14年には三菱地所と共同で東京・丸の内に「まるのうち保健室」をオープンし、「働き女子1000名白書」をまとめる。自費出版の「Luvtelli 基礎栄養学本」「Baby Book ⅠⅡ」は累計35万部を突破。11~15年、ミス・ユニバース・ジャパン・オフィシャルトレーナーとして株式会社タニタとともに取り組んだ「健康美」指導をまとめた著書「タニタとつくる美人の習慣」(講談社)は7万部を突破した。農林水産省「地域食文化活性マニュアル検討委員会」委員。