登山外来の現場から

富士山での3大疾病 脱水、高山病、低体温症

大城和恵・北海道大野記念病院医師/国際山岳医
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 前回は、初めての富士登山で不可欠な高山病対策についてお話ししました。「初めての富士山」後編の今回はクイズからスタートします。

 答えはこのコラムを読み進めていくうちにわかってきます。皆さんも一緒に考えてみてください。

 …………

 ある日の19時ごろ、富士山の救護所に、小学4年生の男の子とお父さんがやってきました。男の子は見るからに元気がありません。雨が降り、ぬれた両手を素手で握り合わせ、震えて立っています。今日は昼にバスで5合目に到着し、うどんを半分食べてから7合目まで登って来たそうです。「7合目の小屋に着いてから元気なくてご飯も食べない」とお父さん。「頭は痛いかな?」と男の子に尋ねるとそっとうなずきました。「いつから痛かった? 歩いている途中? 小屋に着いてから?」と聞くと、「着いてから……」と。すかさずお父さん「お前そんなこと言わなかっただろ?」と、気丈に頑張っていた息子の頭痛を知らなかったことで自分に腹が立ったのか、はたまたせっかく連れて来てあげたのに、思うように進まず残念なのか、口調がきついのでした。

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大城和恵

北海道大野記念病院医師/国際山岳医

おおしろ・かずえ 1967年長野県生まれ。医学博士、山岳医療修士。日本大学医学部卒業後、循環器内科医として約10年間の付属病院勤務を経て、「山での遭難者を助けたい」という思いを募らせて本格的に山岳医療の勉強を始める。98年、アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ(5895m)に登頂。心臓血管センター大野病院(現・北海道大野記念病院)を拠点に診療を続けるが、09年に退職し渡英。1年をかけて日本人として初めて「UIAA(国際山岳連盟)/ICAR(国際山岳救助協議会)/ISMM(国際登山医学会)認定国際山岳医」の資格を取得した。現在は同病院の循環器内科・内科および登山外来で勤務するかたわら、北海道警察山岳遭難救助隊のアドバイザーも務める。遭難実態を知り、現在遭難しないための医療情報、心臓死の予防、高所登山のアドバイス、ファーストエイド技術の講習会主宰など、山と登山に関する多方面で活躍する。13年には三浦雄一郎さんのエベレスト遠征隊にチームドクターとして参加した。自身もマッキンリー、マッターホルン、マナスル(世界第8位)登頂など海外を含む豊富な登山歴を持つ。