孤島の小さな診療所から

「ワンクッションコール」というつながり

太田龍一・沖縄県立南部医療センター付属南大東診療所長
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南大東島の人々の生活全般を支える村役場。島の救急医療も役場の職員の皆さんの手で担われています=筆者提供
南大東島の人々の生活全般を支える村役場。島の救急医療も役場の職員の皆さんの手で担われています=筆者提供

 村役場と診療所の関係についてもう少し書かせていただきたいと思います。

 沖縄県のほとんどの離島には村役場が存在し、島の行政を担っています。診療所にとっても村役場の存在はとても大きいものです。診療所の施設で不具合が生じた時、すぐに相談にのってくださったり、台風中停電しても最低限の医療ができるように発電機を貸してくださったり、さまざまな面で診療所を支えてくれています。インフルエンザが流行し始めた時に、すぐに島内無線で住民に告知をしたり、高齢者の肺炎が増加していることを伝えた時にはいち早くワクチンの無料接種のための補助制度を打ち出したり、島の公衆衛生の重要な方針を決めてくれるのも村役場です。

 そして沖縄県の離島には「ワンクッションコール」というものがあります。離島診療所医師は島内唯一の医師として24時間365日患者さんの急病に対応する必要があります。そのため患者さんに何かあった時にいつでも連絡が取れ、対応できるように、医師は専用の携帯電話を持っています。しかし患者さんから直接電話をかけられるようにすると、医師自身の疲弊につながってしまう可能性があります。そこでできたのが、この「ワンクッションコール」というシステムです。患者さんからの急病の連絡をまず村役場がとり、状況を聞き出し、把握したうえで、必要に応じて内容を医師に適切に伝えるというものです。離島の医療を背負う診療所医師を守るために、沖縄県と各離島が作り上げたこのシステムのおかげで、昔に比べると時間外診療の数が減っていると聞いています。

 ただ、ワンクッションコールの難しいところは、電話対応や医師への情報の伝え方が電話に出る村役場の担当者に任されており、その担当者によって質が一定していないところです。私が診療所に赴任した当初も、とても難しく感じる状況が多々ありました。

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太田龍一

沖縄県立南部医療センター付属南大東診療所長

おおた・りゅういち 大阪府出身。2004年大阪市立大学医学部入学。同大学卒業後、10年から沖縄県立中部病院プライマリケアコースで研修。13年から現職。人口約1400人の南大東島で唯一の医師として、島民の日常的な健康管理から救急医療までを一手に担う。趣味は読書とランニング。毎年秋に開かれる島の運動会、駅伝大会への参加を目指し、鋭意トレーニング中。