こころと向き合う

危険ドラッグ、治療軽視のツケ

松本俊彦・国立精神・神経医療研究センター部長
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 昨年、私が担当する薬物依存症専門外来は、次々に受診する危険ドラッグ患者でごった返していた。

 危険ドラッグが社会問題化したのは2〜3年前からだが、私は5〜6年前には患者からうわさを聞いていた。当時「合法ハーブ」と呼ばれていたその薬物は、好ましい効果が乏しい代わりに害も少ないという詐欺めいた代物だった。ところがその後、薬物の有害性は年々強まり、最終的には覚醒剤をはるかにしのぐモンスタードラッグに成長してしまった。

 なぜこうした変化が生じたのか。規制の影響は無視できないだろう。危険ドラッグとは、既に規制された薬物が持つ化学構造式の「枝葉」に当たる部分を改造して規制を逃れてきた薬物だが、新たに規制が加わってもすぐ改造が追加されて規制を逃れる−−というイタチごっこ的な変わり身の早さが特徴である。これに対し、国は「細部が違っても基本構造が共通していたらダメ」という「包括指定」で対抗したが、この施策は社会に弊害をも…

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松本俊彦

国立精神・神経医療研究センター部長

まつもと・としひこ 国立精神・神経医療研究センター病院精神科医師、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長、精神保健指定医、精神保健判定医、精神神経学会精神科専門医・指導医。