古代伝統医学アーユルヴェーダがもたらした薬(1)
鷺森ゆう子・エスノ・メディカル・ハーバリスト(民族薬用植物研究家)藤原幸一・生物ジャーナリスト/NATURE's PLANET代表- 保存保存
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ボルネオ島、スマトラ島:世襲で薬を作ってきた女性たちに出会う
インドネシアには「ジャムウ」と呼ばれる、その起源が1000年以上も昔にさかのぼる、インドから伝わった民間薬がある。インドネシアで発展してきたジャムウ薬文化は、いまでもかの国で広く庶民に受け入れられている。
インドネシアの隣国、マレーシア・ボルネオ島を訪れた時、「ここにもジャムウがあるのでは」という好奇心から取材してみることにした。空港から乗ったタクシーの中で30代前半の運転手に「ジャムウを知っていますか?」と聞くと、「もちろん! 毎日飲んでいるよ。おかげで元気いっぱい」と、はつらつとしている。到着した宿のスタッフにも同じ質問をすると、「朝、飲んだばかりだよ!」と、答えた。その後出会った人に、何度か尋ねてみたが、ほとんどの人が知っていた。隣国マレーシアにもジャムウ薬文化は広まっていた。
ジャムウ(現地名:jamu)の語源は、インドのサンスクリット語「japa」に由来し、「魔法」や「呪文」の意味を持つ。
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エスノ・メディカル・ハーバリスト(民族薬用植物研究家)
さぎもり・ゆうこ 神奈川県生まれ。動物専門学校看護科卒。日本大学英文学科卒。1994年より動物病院で獣医助手として勤務する。同時に海や川の環境保全を行う環境NGOに携わり、海洋環境保全に関するイベントの運営などを行う。また中米のベリーズを訪れ、古代マヤ人の知恵を生かしたナチュラルメディスンに触れ、自然の薬に、より関心を持つようになる。このような体験を会報誌へ執筆する。95年から1年間、東アフリカのケニアにて動物孤児院や、マサイ族の村でツェツェフライコントロールプロジェクトのボランティアに参加する。このときサバンナでは、マサイ族直伝のハーブティーなどを体験する。帰国後は再び環境NGOなどに関わりながら、国内での環境教育レクチャーや、中米グァテマラの動物孤児院にてボランティア活動を行うなど、野生生物と人との共生について探求する。2006年から野生生物の生きる環境や、世界の自然医療の現場を巡る。
生物ジャーナリスト/NATURE's PLANET代表
ふじわら・こういち 秋田県生まれ。日本とオーストラリアの大学・大学院で生物学を学ぶ。現在は、世界中の野生生物の生態や環境問題、さらに各地域の伝統医学に視点をおいて取材を続けている。ガラパゴス自然保護基金(GCFJ)代表。学習院女子大学・特別総合科目「環境問題」講師。日本テレビ「天才!志村どうぶつ園」監修や「動物惑星」ナビゲーター、「世界一受けたい授業」生物先生。NHK「視点論点」「アーカイブス」、TBS「情熱大陸」、テレビ朝日「素敵な宇宙船地球号」などに出演。著書は「きせきのお花畑」(アリス館)、「森の声がきこえますか」(PHP研究所)、「マダガスカルがこわれる」(第29回厚生労働省児童福祉文化財、ポプラ社)、「ヒートアイランドの虫たち」(第47回夏休みの本、あかね書房)、「ちいさな鳥の地球たび」(第45回夏休みの本)、「ガラパゴスに木を植える」(第26回読書感想画中央コンクール指定図書、岩崎書店)、「オーストラリアの花100」(共著、CCCメディアハウス)、「環境破壊図鑑」(ポプラ社)など多数。