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眠れない高齢者には睡眠薬よりボランティア

石蔵文信・大阪大学招へい教授

 「睡眠薬でボケませんか?」というのは、患者さんに睡眠薬を処方した時に出てくる定番の質問である。「ボケる」は今や差別語扱いで、「認知障害になりませんか?」が正しい言い方である。だが、いまだにこの「正しい」質問をする患者さんはほとんどいない。

 睡眠薬で認知障害の発症が早まるかどうかの確固たる証拠がなかったので、私は「影響は少ないと思うし、たとえそのようなことが起こったとしても、使わない場合と1年も変わらないのじゃないでしょうかね。ただ、睡眠障害を放置しておくと、いろいろな病気の引き金になるし寿命も短くなるので、気にせずに服用した方がよい」とお答えしている。

 これまでに、睡眠剤・安定剤としてよく処方される「ベンゾジアゼピン」系の薬の使用と認知症リスク増加との関連は、研究されてはいる。ただし、研究方法に限界があって、真実は不明のままであった。

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大阪大学招へい教授

いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。