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胃がんのリスク9割減も ピロリ菌除菌の効果

尾高健夫・尾高内科・胃腸クリニック院長
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 前回ご紹介した「機能性ディスペプシア(FD)」の代表的な症状は、食後のもたれ感などの運動機能異常と、心窩部(しんかぶ=みぞおち)痛などの知覚機能異常で、これらは胃炎でも胃潰瘍でも起こるとお話ししました。この胃炎や胃潰瘍の原因として大きな比重を占めているのが「ヘリコバクター・ピロリ」、通称「ピロリ菌」です。今回は、ピロリ菌によって引き起こされる症状と対処法についてお話しします。

 ピロリ菌は胃の粘膜内にすむ細菌です。胃の中は胃酸によって強い酸性になっているので、通常、細菌はすめません。それなのにピロリ菌がすんでいられるのは、ウレアーゼという酵素を分泌するからです。ウレアーゼは胃液中の尿素を分解してアルカリ性のアンモニアを作ります。それによって、ピロリ菌は自分の周囲だけ胃酸を中和して生きているのです。

 ピロリ菌は口から体内に侵入します。免疫の強い大人は菌が侵入しても排除されますが、幼い子どもは感染し、菌と共存するようになります。感染源はおもに水と言われていますが、はっきりしたことはわかっていません。日本では、衛生環境の整備が不十分だった時代に生まれた50歳以上の感染率が高く、若い世代ほど低くなっています。

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尾高健夫

尾高内科・胃腸クリニック院長

おだか・たけお 1989年島根医科大学(現・島根大学医学部)卒業後、千葉大学医学部第1内科(現・消化器・腎臓内科学)入局。千葉県立東金病院内科医長、東邦大学医療センター佐倉病院内視鏡治療センター講師、おゆみのクリニック(千葉市)消化器科部長などを経て、2014年千葉市内に尾高内科・胃腸クリニックを開設。長く消化器疾患と内視鏡検査の専門医として診療にあたり、特に胃腸疾患では内視鏡による早期がんの診断と治療、ヘリコバクター・ピロリの除菌治療、胃食道逆流症、便秘・下痢症など幅広い疾患を対象に治療と研究を行ってきた。モットーは「人として優しく、医者として明るい医療」。科学的エビデンス(証拠)と自身の経験による知識をバランスよく、わかりやすい言葉で患者に伝えることに心を砕いている。