こころと向き合う

誤解されている「自傷」

松本俊彦・国立精神・神経医療研究センター部長
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 「自傷」は随分前から、若者の間でありふれた現象となっている。自殺以外の意図で自らの身体を傷つける行為を指し、よく知られているのはリストカットだ。私の調査では、10代の1割に自傷経験があり、そのうちの約6割は10回以上繰り返しているとの結果が出ている。

 自傷ほど誤解されている行為もない。いわく「甘えている」「弱い」「人の気をひこうとしている」。だが違うのだ。自傷の主な目的は、怒りや不安、絶望感といったつらい感情を和らげることにある。そして、自傷する人の96%は一人きりの時に実行し、それを誰にも告げない。つまり自傷とは、周囲の関心をひくのとは正反対、むしろ困難な状況を独力で生き延びるための行動なのだ。

 こうも言える。自傷する人は「人は必ず裏切る。でもリストカットは絶対に裏切らない」と信じ込んでいる。…

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松本俊彦

国立精神・神経医療研究センター部長

まつもと・としひこ 国立精神・神経医療研究センター病院精神科医師、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長、精神保健指定医、精神保健判定医、精神神経学会精神科専門医・指導医。