健康に暮らす無難に生きる方法論

“カロリーをワットに変えよう”日本原始力発電所協会の提案

石蔵文信 / 大阪大学招へい教授

メタボは一向に減っていない。

 私事で恐縮だが、前回のこの欄で「原始力発電(自転車発電)で携帯を充電しよう」という話を書いた。私たちが設立した「日本原始力発電所協会」のキャンペーンの一つに“カロリーをワットに変えよう”がある。メタボがもたらす健康被害についての啓発がされて久しいが、一向にメタボは減らない。先日紹介した論文でも、体重を減らすことはかなり困難であると報告している。どうもメタボはマイナスイメージが付きまとうが、私たちはポッコリおなかにたまった脂肪(カロリー)は自転車発電機で電気(ワット)に転換することができるというプラスの側面もあり、自転車発電で減量と節電の国民的課題が一挙に解決すると啓発を進めている。

オフィスのデスクの下に自転車を

 わざわざ、ジムに行くのも面倒な方には、事務机の下に発電機を置いて仕事をすれば、ダイエットになるばかりか、電気代は節約になり、停電の時でも仕事ができるというメリットがある。ちなみにジムに設置してあるトレーニング用の運動バイクは1時間に約30Wの電気を消費する。一方、我々の推奨している自転車型発電機は逆に30Wほど電気を作ることができる。全国の高齢者3500万人のうち500万人が電気消費型のバイクから発電型バイクに代えて1時間ほど運動すれば 差し引き 60W x 500万人 = 30万キロW という中型火力発電並みの電気を作ることができるばかりか、健康になって医療費の削減も期待できる。それが我々のもくろみである。

スマートデスクの「樟蔭1号」。ペダルをゆっくりこぐとLEDが点灯したり、扇風機が回ったりするほか、タブレット型端末を動かし、充電することも可能だ。
スマートデスクの「樟蔭1号」。ペダルをゆっくりこぐとLEDが点灯したり、扇風機が回ったりするほか、タブレット型端末を動かし、充電することも可能だ。

 昨年、大阪樟蔭女子大学では、インテリアデザイン科の豊嶋幸生教授と私との共同で、メタボを解消するための机(スマートデスク)を試験的に開発した。「樟蔭1号」と名付けた机のペダルをゆっくりこぐとLEDが点灯して扇風機が回るほか、タブレット型のパソコンは駆動し、充電も可能である。現在量産をしてくれる会社を募集中である。さて、こんなバカな考えは私だけかと思いきや、海外でも同様の試みが行われていた。

自転車付きデスクで健康増進!

 米アイオワ大学のLucas Carr氏らはデスクワークをしながら自転車こぎ運動を行うことで身体活動量を増加させることが可能であると報告している。ペダルこぎの量が多かった者は体重減少を報告した例が多く、仕事に対する集中力も増し、ペダルこぎの少なかった者に比べてより病気になる割合も少なかったようである。研究では27人の労働者を対象にして、活動をモニターでき、机の下に入る小型の自転車こぎマシンを使ってもらったところ、平均で1日あたり50分、16週間にわたって運動が継続したという。加えて、参加者には運動を促すようなメールが毎週3回送られてきたというから、結構きっちり監視を行ったようだ。最終的には70%の参加者が継続することにしたらしい。企業がわざわざ健康器具を設置したり、安く利用できるジムと契約したりしても、面倒だという理由で参加者は限られる。身近に運動器具があることで、身体運動ができるのは大きなメリットである。

オフィスでスマホ充電しながら1200kcal消費

 この研究で使ったマシンは小型ではあるが、発電はできないようである。発電するには思い切りこぐ必要はなく、ゆっくりとこいでも時間はかかるが十分に可能だし、続けるのも楽なので、高齢者向きである。我々の研究ではiPhoneを1%充電するのに、約5分の自転車こぎが必要で、その間の消費エネルギーは約12kcalである。100%の充電には6〜8時間くらいかかるので、ちょうど就業時間内で充電は完了し、消費エネルギーは約1200kcal と予想される。軽く運動することで、ストレスの発散や筋肉の強化にもつながり、いろいろな病気の予防にもなると予想されるが、それには今後の検討が必要だ。

デスク下発電機でメタボ解消、節電、防災対策も!

 私たちも提携企業に発電型自転車を置いていただき、携帯の充電を促す試みをやってみた。しかしオフィスの中に置いてあっても、わざわざ設置してある場所に行ってこがなくてはならないので、参加者は増えず、継続も困難であった。現在は自転車でレーシングカーを走らせるプロジェクトを始めているが、最終的には机の下に設置できる発電型マシンの有効性の確認を目指している。

 オフィスで使用するときの問題点は、小さくて邪魔にならないこと以外にマシンをこいだ時の音が静かなことが大切である。樟蔭1号も結構うるさいので、大きなオフィスには向かない。今後は小型化と消音を目指したい。こんなマシンが各オフィスにあると、メタボは解消し、かなりの節電になるのではないだろうか? また、災害で停電になっても簡単な作業は継続可能であるから防災の面でも役に立つ。

 大阪府吹田市は市民の健康維持と防災対策の目的で、大阪樟蔭女子大学と提携し市内2カ所の体育館、(片山体育館、目俵体育館)に自転車発電装置を設置している。近くに来られた際はぜひお立ち寄りいただきたい。その他の自転車発電装置の設置場所も日本原始力発電所協会のウェブサイト(http://eco-powerplant.com/)に掲載されている。

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石蔵文信

石蔵文信

大阪大学招へい教授

いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。

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