孤島の小さな診療所から

対話から生まれる島の認知症対策

太田龍一・沖縄県立南部医療センター付属南大東診療所長
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自然の岩をダイナマイトでくりぬいて造ったプールがある「海軍棒」の海岸に咲いていたボロジノニシキソウの花=筆者提供
自然の岩をダイナマイトでくりぬいて造ったプールがある「海軍棒」の海岸に咲いていたボロジノニシキソウの花=筆者提供

 先日とてもおもしろい企画が島で行われました。

 「島の認知症の今を考える」と題した勉強会です。離島における認知症の現状に関心を持つ方をお招きしての対話形式のイベントでした。実は南大東島は沖縄県の離島の中では、北大東島に次いで高齢化率が低い島です。最近の統計では、約20%で、これは全国平均(26%=2015年版高齢社会白書)より低くなっています。島に高齢の方はたくさんいますが、みんな元気に現役で農業や漁業を営まれており、認知症や寝たきりの問題はほとんどないように見えます。

 しかしこれには以前もこの連載で紹介した通り、南大東島の歴史が関係する特有の事情が背景にあります。つまり、島に人が住み始めてまだ百十数年しかたっておらず、島の人々の中に「島に稼ぎにきた」という意識が強いことです。今も島の人たちがよく使う「(沖縄本島に)引きあげる」という言葉に象徴されるように、南大東島には出稼ぎにきていると思っている人が多いため、高齢者は働けなくなったら沖縄本島に戻り、そこで余生を…

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太田龍一

沖縄県立南部医療センター付属南大東診療所長

おおた・りゅういち 大阪府出身。2004年大阪市立大学医学部入学。同大学卒業後、10年から沖縄県立中部病院プライマリケアコースで研修。13年から現職。人口約1400人の南大東島で唯一の医師として、島民の日常的な健康管理から救急医療までを一手に担う。趣味は読書とランニング。毎年秋に開かれる島の運動会、駅伝大会への参加を目指し、鋭意トレーニング中。