Dr.堀江重郎の健康羅針盤

新薬&手術ロボット 長足の進歩を続ける腎臓がん治療

堀江重郎・順天堂大学教授
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 前回は、腎臓のがんになりやすいリスクファクターについて説明しました。今回は、不幸にも腎臓にがんが見つかった場合の治療方法について見ていきましょう。

 腎臓がんの治療における基本は、手術です。腎臓は幸い二つありますので、以前は小さいがんであっても片方の腎臓をまるごと摘出していました。しかし、がんだけを摘出して腎臓をなるべく残す「腎部分切除」をしても治癒率に変わりはないことから、現在はできるだけ部分切除を行うのが一般的です。部分切除をすることで、加齢とともに低下していく腎機能を維持することが可能になりました。

 前回、説明したように腎臓はからだの奥にあります。手術をするときには、おなか側からのアプローチと、背中側からのアプローチという二つの方法がありますが、どちらの方法でも大きな傷をからだに残すことになります。なるべく患者さんの手術の負担を減らすためにこの25年間、日本の泌尿器科医は、小さい穴から手術器械とカメラを入れて手術する腹腔(ふくくう)鏡手術を世界に先駆けて開発してきました。現在では、多くの医師が関わり、この腹腔鏡手術を習得するシステムが泌尿器科医の専門医教育の中で確立しました。腎臓の腹腔鏡手術は安全で痛みが少なく、早く社会復帰ができる低侵襲手術と言えます。

 この腹腔鏡手術は、カメラで臓器を拡大してみることができるので、細かい血管までよくわかります。その半面、実際に臓器を肉眼で立体的に見る従来の手術と異なり、平面的で奥行きのないいわば2Dで手術を行わないといけません。また外から棒状の手術器具をからだの中に入れて手術を行うので、手の指でメスやピンセットを使うのと異なり、手術器具の動き方は直線的になります。腎臓を丸ごと摘出するには問題ないのですが、部分切…

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堀江重郎

順天堂大学教授

ほりえ・しげお 順天堂大学大学院教授、泌尿器科医。1960年生まれ。東京大学医学部卒業。日米で医師免許を取得し、国立がんセンター中央病院などを経て、42歳で帝京大学医学部主任教授に就任。日本初の男性外来であるメンズヘルス外来を開設。2012年より現職。手術ロボット・ダヴィンチを駆使した前立腺、腎臓手術のトップランナーであると同時に、アンチエイジングと男性医学、腎臓学の研究に没頭している。中高年男性をハツラツとさせるのが生きがい。日本メンズヘルス医学会理事長、日本抗加齢医学会副理事長。著書に「ヤル気がでる!最強の男性医療」(文春新書)、「男性の病気の手術と治療」(かまくら春秋社)ほか。