登山外来の現場から

山の知識を生かして巨大災害に対処する!

大城和恵・北海道大野記念病院医師/国際山岳医
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 災害やテロなど、悲しいニュースが相次いでいます。被害に遭われた方々に、心よりお見舞い申し上げます。

 実は、3月にベルギー・ブリュッセルで発生した連続テロ事件の当日、私は事件の舞台の一つとなったブリュッセル空港にいました。幸い数時間違いで、被害には遭いませんでした。今日自分が難に遭う、とは思えずに過ごしている一方、今日一日を安全に過ごせたことは当たり前ではないのかもしれないな、と思うようになりました。

 もし自分の身に何か起きたとき、自分には何ができるのだろうか。登山のように、手持ちのものが限られていたり、安全な場所ではなかったり、天候の影響を受けたり、病院から離れた場所だったりすると、状況に応じて生き抜くための知恵が必要になります。災害は、どんな季節や天候・時間で起こるか分からず、物資は制限され、医療機関が近くにあっても機能していないこともあります。東日本大震災では、まだ寒い3月の発生で、低体温症が危惧されました。熊本地震で最初の揺れが起きた4月14日は、日中の最高気温が27度あったそうです。この気温差だけでも環境は大きく異なり、対処法も変わります。

 今回は熊本地震の発生を受けて、山で培った知識や経験を災害から生き抜くために役立ててもらえないものか、考えてみました。

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大城和恵

北海道大野記念病院医師/国際山岳医

おおしろ・かずえ 1967年長野県生まれ。医学博士、山岳医療修士。日本大学医学部卒業後、循環器内科医として約10年間の付属病院勤務を経て、「山での遭難者を助けたい」という思いを募らせて本格的に山岳医療の勉強を始める。98年、アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ(5895m)に登頂。心臓血管センター大野病院(現・北海道大野記念病院)を拠点に診療を続けるが、09年に退職し渡英。1年をかけて日本人として初めて「UIAA(国際山岳連盟)/ICAR(国際山岳救助協議会)/ISMM(国際登山医学会)認定国際山岳医」の資格を取得した。現在は同病院の循環器内科・内科および登山外来で勤務するかたわら、北海道警察山岳遭難救助隊のアドバイザーも務める。遭難実態を知り、現在遭難しないための医療情報、心臓死の予防、高所登山のアドバイス、ファーストエイド技術の講習会主宰など、山と登山に関する多方面で活躍する。13年には三浦雄一郎さんのエベレスト遠征隊にチームドクターとして参加した。自身もマッキンリー、マッターホルン、マナスル(世界第8位)登頂など海外を含む豊富な登山歴を持つ。