実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

感染症は治っても…水ぼうそうがもたらす「あばた」の苦悩

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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理解してから接種する−−「ワクチン」の本当の意味と効果【8】

 少し前、ある若者に「あばたもエクボ」と言うと、「あばたって何?」と質問されました。最近、ことわざや慣用句が通じずにコミュニケーションがとれないことが増えてきました。これは私が年をとったということなのでしょう。

痘痕=人類が撲滅した感染症「天然痘」の“あと”

 あばたは漢字では「痘痕」と書きます。その正確な意味は天然痘(痘瘡=とうそう)が治った後にできる顔面のくぼみのことです。しかし、天然痘は人類がすでに撲滅に成功した感染症で1980年に世界保健機関(WHO)が根絶宣言をし、その後患者の発生はありません。天然痘を撲滅できたのは世界中で徹底してワクチンを接種したからです。世界で初めて誕生したワクチンも天然痘のワクチンです。過去、天然痘は世界中で猛威をふるい大勢の命を奪いました。歴史上の人物にも天然痘を患った人は多く、日本では、高杉晋作、夏目漱石、緒方洪庵あたりが有名です。ちなみに、医師でもある緒方洪庵は自らが感染した後、日本で天然痘ワクチンを普及させることに尽力しました。

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト