ひたむきに生きて

サッちゃんに教わった「不屈の意志が生む奇跡」

天野篤・順天堂医院院長/順天堂大学教授
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心臓手術をする天野篤・順天堂大学教授(中央)=東京都文京区の順天堂医院で2012年5月21日、丸山博撮影
心臓手術をする天野篤・順天堂大学教授(中央)=東京都文京区の順天堂医院で2012年5月21日、丸山博撮影

 約7200例も手がけた心臓手術を振り返ってみると、当時の実力で成功できたのは「奇跡」とさえ思えることがままあります。特に忘れられないのが、約25年前の「サッちゃん」の手術です。

 軟式テニスの国体候補だった20歳のサッちゃんが、病院に緊急搬送されてきたのは6月初旬。心臓のポンプ機能が低下し、横になると苦しい「うっ血性心不全」でした。苦しがるサッちゃんを見て、「手術は簡単ではなさそうだ」と直感しました。すぐに超音波検査すると、左心房には大きな腫瘍と思われる塊があり、その周りがゴツゴツして心臓に食い込んでいました。検査結果から、心臓の悪性腫瘍で、取り切らなければ1カ月以内の命と予想しました。

 「心臓にがんはできない」と思っている方が多いですが、心臓病の0・1%の割合で腫瘍は発生し、そのうちの2割が悪性です。

 実は、サッちゃんが受診する1カ月前、同じ心臓の悪性腫瘍だった16歳の女子高校生が手術のため緊急入院しました。しかし、心臓に栄養を送る冠動脈に食い込んだ腫瘍を取り切れず、術後2週間で亡くなりました。その時、どこに食い込んでいようと全て取り切ることが死を回避する唯一の方法だと、全医療スタッフが知ったのです。

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天野篤

順天堂医院院長/順天堂大学教授

あまの・あつし 1955年生まれ。埼玉県出身。83年日本大医学部卒。亀田総合病院、新東京病院などを経て、2002年7月から順天堂大学教授、16年4月から順天堂大学医学部付属順天堂医院院長。12年に天皇陛下の心臓バイパス手術を執刀したことで知られる。