実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

あなたにも起こるかも…尖圭コンジローマがもたらす苦悩

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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 今回からヒトパピローマウイルス(HPV)の話です。今回は症例の紹介をしたいと思います。下記は実際に私が診察した例です。ただし本人が特定されないようにアレンジを加えています。もしもあなたの周囲に似たような人がいてもそれは単なる偶然であることをお断りしておきます。

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 山岡彩花(仮名)は26歳の会社員。2カ月前に新しいカレシができたおかげで、毎日が楽しくて仕方がなかったのは先週までのこと。今日は職場から2駅離れた街のクリニックに来た。3日前に自宅近くのクリニックでも受診している。受付で塗り薬を渡され、クリニックを出た彩花は、ショックのあまり涙が止まらず、目的もなくしばらくあたりをさまよっていたようだ。混乱したままLINEでカレシに「別れましょう」と送信した。

 彩花が二つのクリニックで受けた診断はいずれも「尖圭(せんけい)コンジローマ」。性器にできるイボだ。カレシの性器にはそのようなイボがなかったので、その前に付き合っていた元カレから感染したに違いない。カレシに「これ、性病じゃないのか」と言われたのが1週間前の旅行先でのことだった。それ以来カレシとは連絡を取っていない。

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト