実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

性感染症・尖圭コンジローマ 心身に及ぶ治療の難しさ

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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 性器にできるイボにはさまざまなものがあり、なかには一目見た瞬間に悪性腫瘍を疑うべきものもあれば、病気とは呼べない単なる腫瘤(しゅりゅう)という場合もあります。一部の種類のヒトパピローマウイルス(HPV)によって起きる性感染症、尖圭(せんけい)コンジローマは、性器のイボを診たときには必ず鑑別に加えるべきもので、私の印象で言えば、「性器にイボができた」と受診される人の約3割がこの病気です。尖圭コンジローマは病理学的には「良性の腫瘍」ですが、だからといって放置していいわけではありません。自然消失はなくはないものの、期待はできません。まれですが巨大化して悪性化したという報告もあります。それに、何よりも他人に感染させるリスクがあります。

 程度にもよりますが治療に時間がかかり、いったん消失しても再発の可能性があり、特に女性の場合は膣(ちつ)内にできたかどうか(再発も含めて)は自分でまったく分からないという厄介な特徴を持つ疾患です。患者さんはたいてい精神的にもつらくなってきますから、診断を告げるときにはそれなりに時間を取ります。経験上、この疾患は診断を告げるときのこの時間(「カウンセリング」という表現が適切かもしれません)が治療そのものよりも重要です。

 そういう疾患だからこそ「誤診」はあってはなりません。どのように診断しているかというと、ある程度進行した例は典型的な症状を呈するため、見間違えることはありません。ただ、初期の段階や、非典型例となると判断に迷うことがあります。鑑別に挙げる(比較対象として考える)べき疾患は、(1)扁平(へんぺい)コンジローマ、(2)ボーエン病、(3)ボーエン様丘疹症、(4)尋常性疣贅(ゆうぜい)、(5)伝染性軟属腫、…

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト