消化器がんと闘う医師 その名も小高雅人!!!

抗がん剤 毒ガスから生まれた救世主

小高雅人・佐野病院消化器がんセンター長
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 今回は、抗がん剤についてお話しさせていただきます。

 皆さんは、「抗がん剤」と聞いてどのようなイメージを抱くでしょうか? 抗がん剤の効果という側面より、吐き気、嘔吐(おうと)、食欲不振、下痢、脱毛などの副作用によって日常生活がままならなくなる、ということを先行して考えてしまうのではないでしょうか。現在は副作用を抑えるさまざまな工夫や対応が考案、実施され、皆さんが想像しがちな「怖さ」が逆に現実とは異なっていることもあります。順に説明しましょう。

 まず、「抗がん剤」という薬剤が世に登場したきっかけをご存じでしょうか。抗がん剤の起源は毒ガスだと言われています。今なら「化学兵器」と呼ばれるものです。第二次世界大戦中の1943年12月、イタリア南部バーリ港に停泊していたアメリカの輸送船「ジョン・ハーヴェイ号」がドイツ軍の爆撃を受け、積み荷の大量のマスタードガスが海に漏れ出し、連合軍兵士らが大量に浴びるという事件が起こりました。マスタードガスはイペリットとも呼ばれる第一次世界大戦でも使われた毒ガスで、不純物の混じった状態だとからしやニンニクに似た臭いがすることから「マスタード(からし)」の名前が付いています。

 翌朝から、兵士たちに失明や化学物質によるやけどなどの症状が表れはじめ、中には血圧低下やショックを起こして白血球値が激減する人が出ました。結果、83人が亡くなりました。毒ガスによる直接的な死亡に加え、白血球の大幅減少による感染症が死因であることがその後、分かりました。このことから、マスタードガスに白血球を減少させる作用があると考えられるようになり、白血病や悪性リンパ腫など白血球が増えすぎる血液のが…

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小高雅人

佐野病院消化器がんセンター長

こたか・まさひと 大阪府生まれ、1997年高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。同大学付属病院第1外科、高知県立中央病院(現・高知医療センター)外科、国立がんセンター(現・国立がん研究センター)東病院大腸骨盤外科などを経て、2006年から佐野病院消化器センターに勤務。13年同病院消化器がんセンター長に就く。専門は胃がん、大腸がんの手術と化学療法、その他の消化器がん治療。