実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

性器のイボ、尖圭コンジローマの治療法は

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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 治る病気とはいえ、ときに治療に時間がかかり、再発を繰り返すこともあるやっかいな性感染症、尖圭(せんけい)コンジローマの治療についてみていきましょう。

 日本性感染症学会のガイドライン上も(注1)、私の経験からも、最も推薦できるのは「液体窒素療法」です。これはマイナス196度の液体窒素を、綿棒などを用いてイボそのものに塗布する治療法です。マイナスといっても、実際に感じるのは「冷たさ」ではなく「痛み」です。ただし、麻酔を必要とするほどは痛くありません。その上、費用も安くつき、少々強く塗布しても瘢痕(はんこん)になるほどではありませんので最初に試すには最適です。また、液体窒素の利点として、部位がどこであっても治療できるということもあります。つまり、男性であれば陰茎、陰嚢(いんのう)、肛門、尿道口のどこにでも使えますし、女性の場合も、外陰部、会陰部(膣と肛門の間)、肛門、膣壁、子宮頸部・膣部のどこにでも塗布できます。

 イボが小さければ1 度の治療で治ることもあります。しかし、通常は何度か繰り返し行うことになります。1〜2週に1度通院してもらい治療を繰り返します。3割負担であれば、再診となる2回目以降に患者さんが窓口で支払う医療費は1000円程度です。ちなみに、前々回に例として取り上げた女性(山岡彩花さん=仮名)の場合、合計4回の治療でイボは完全消失し、その後半年が経過しても再発しなかったために「完全治癒」と判断しました。診察室でにっこりほほえんだ彼女は「実は新しいカレシができたんです。今はまだプラトニックな関係だけど、これから発展しそうです!」と話していました。

 次に推薦できるのが「イミキモド(商品名・ベセルナクリーム)」という塗り薬です。これは2007年に登場した比較的新しい外用薬です。この薬の利点は、高い効果が期待できること、自宅で治療できること(液体窒素療法は通院しなければなりません)、治療後の瘢痕が残らないこと、などです。欠点は、保険適用されるとはいえ費用が少し高いこと(3割負担、2週間分の処方で3000円弱)、副作用が少なくないこと、粘膜には使えないこと、などです。副作用は軽症のものも含めれば半数程度の人に表れます。ほとんどは塗った部分が痛くなったり、ただれたりといった皮膚症状だけですが、なかには全身倦怠(けんたい)感や発熱といったインフルエンザに似たような症状が表れることもあります。

 粘膜に使えない、というのは特に女性にとっては大きな欠点と言えます。なぜなら、女性の場合、出現部位が外陰部の表皮部分や肛門周囲に限局していればいいのですが、多くのケースで膣の入り口付近の粘膜、さらには膣壁や子宮にまで病変が波及していることが多いからです。粘膜に使うとどうなるかというと、かなりの確率で激しい痛みやただれが出現します。男女とも、肛門粘膜にできたときも用いることができません。

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト