実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

HPV母子感染 知られざるリスク

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
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 ワクチンシリーズ第11回「あなたにも起こるかも…尖圭コンジローマがもたらす苦悩」で紹介した男性、松本隆平さん(仮名)は、奥さんではない女性との性的接触で尖圭コンジローマに感染し、発症していました。松本さんの言葉をそのまま借りると「尖圭コンジローマなんて病気知らなかったし、そもそも性感染症はコンドームで防げると思っていた」そうです。

 コンドームですべての性感染症を防げるわけではありません。たしかにHIV(エイズウイルス)やC型肝炎ウイルスであれば、コンドームでほぼ予防することができます(ただしオーラルセックスでの感染もあります。私が経験した症例でも、生涯ただ一度のオーラルセックスでHIVに感染したという人がいます。コンドームはオーラルセックスにも用いて初めて有効なのです)。一方、コンドームをきちんと使用したとしても防げない性感染症もたくさんあります。もしワクチンを接種していないならB型肝炎ウイルスが最も危険ですし、梅毒や性器ヘルペスもコンドームで防げません。尖圭コンジローマについても同様です。

 私は松本さんに、奥さんの診察が必要であることを何度も言いました。彼自身は幸いなことに、液体窒素療法を数回おこなっただけで性器のイボは完全に消失し、その後受診していませんから、おそらく再発もしていないのでしょう。しかし、ついに奥さんを連れて来ることはなく、最後の診察時にも「まだ伝えていない」と話していました。「浮気」をしてしまったことが言えない彼の気持ちは理解できなくはありません。しかし、この感染…

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谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト