ひたむきに生きて

天皇陛下の手術につながった1人の患者

天野篤・順天堂医院院長/順天堂大学教授
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心臓手術をする天野篤・順天堂大学教授(中央)=東京都文京区の順天堂医院で2012年5月21日、丸山博撮影
心臓手術をする天野篤・順天堂大学教授(中央)=東京都文京区の順天堂医院で2012年5月21日、丸山博撮影

 今回は、後に天皇陛下の心臓手術の成功へとつながるきっかけとなった、私にとって思い出深い手術について書いてみたいと思います。

 現在、私が心臓手術をする患者の約1割は80歳以上の高齢者です。しかし、私が心臓外科医を志した30年前は、70代の手術もまだ珍しい時期でした。ある時、80歳の神父が激しい胸痛で病院にやってきました。心電図の変化があまりに強烈だったため、心臓の栄養血管である冠動脈を映し出す心臓カテーテル検査を緊急で行い、直ちに手術となりました。

 さっそく、私が所属していた心臓血管外科のチームは患者の診察に向かいました。チームの決断は比較的スムーズでした。患者はこれまで何一つ病気になることなく、房総の外れの地域で数少ない教会を滞りなく運営していたことから、私たちは高齢でも十分に手術に耐えられると判断しました。3本の冠動脈に血液がきちんと流れるよう迂回(うかい)路(バイパス)を形成するバイパス術を実施したのですが、80代でこの手術は関東圏で…

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天野篤

順天堂医院院長/順天堂大学教授

あまの・あつし 1955年生まれ。埼玉県出身。83年日本大医学部卒。亀田総合病院、新東京病院などを経て、2002年7月から順天堂大学教授、16年4月から順天堂大学医学部付属順天堂医院院長。12年に天皇陛下の心臓バイパス手術を執刀したことで知られる。