医をめぐる情景

自殺を止める言葉

上田諭・東京医療学院大学教授
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テレビドラマ「古畑任三郎」(1999年)

 言葉で止められる自殺と、言葉ではどうしても止められない自殺がある。

 殺人課の刑事が名推理を展開するテレビドラマ「古畑任三郎」に、言葉で自殺を止めた好例があった。1999年5月11日放映の「再会(古い友人に会う)」。人が死なない異例の回として知られる。二回り年の離れた若い妻の不倫が露見し、あざ笑われるのを恐れた壮年の流行作家の男性(演じるのは津川雅彦)が、「恥辱にまみれた晩年を過ごすくらいなら」「すべてを失うことは耐えられん」とピストルで自殺しようとする。「古い友人」である古畑は、彼に言葉をかける。それを聞いて男性は、自殺を思いとどまる。

 田村正和演じる古畑は、いつになく熱をこめて語りかけた。

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上田諭

東京医療学院大学教授

うえだ・さとし 京都府生まれ。関西学院大学社会学部では福祉専攻で精神医学のゼミで学ぶ。卒後、朝日新聞に記者で入社したが、途中から内勤の編集部門に移され「うつうつとした」日々。「人生このままでは終われない」と、もともと胸にくすぶっていた医学への志向から1990年、9年勤めた新聞社を退社し北海道大学医学部に入学(一般入試による選抜)。96年に卒業、東京医科歯科大学精神神経科の研修医に。以後、都立の高齢者専門病院を中心に勤務し、「適切でない高齢者医療」の現状を目の当たりにする。2007年、高齢者のうつ病治療に欠かせない電気けいれん療法の手法を学ぶため、米国デューク大学メディカルセンターで研修し修了。同年から日本医科大学(東京都文京区)精神神経科助教、11年から講師、17年4月より東京医療学院大学保健医療学部教授。北辰病院(埼玉県越谷市)では、「高齢者専門外来」を行っている。著書に、「治さなくてよい認知症」(日本評論社、2014)、「不幸な認知症 幸せな認知症」(マガジンハウス、2014)、訳書に「精神病性うつ病―病態の見立てと治療」(星和書店、2013)、「パルス波ECTハンドブック」(医学書院、2012)など。