実践!感染症講義 -命を救う5分の知識-

日本のワクチン注射 世界の“非常識”

谷口恭・太融寺町谷口医院院長
  • 文字
  • 印刷

 ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種後に生じる副反応の症状として、よく指摘されているのが全身の疼痛(とうつう、痛み)です。そして、この原因としてワクチンの成分ではなく注射をうつこと自体の痛みが引き金になって、長期間の疼痛を引き起こしているという意見があります。その真偽については立ち入りませんが、ここでは「HPVワクチンは痛い」ということについて述べていきたいと思います。

 一般の人からすればワクチンをうたれるときにあまり違いを意識したことはないと思いますが、我々医療者はワクチンをどのようにうつかで二つに分類しています。「皮下注射」と「筋肉注射」です(これ以外に皮内注射という方法があり、この方法でうつワクチンとしては結核を予防するBCGワクチンがあります。また注射以外の方法としてはロタウイルスなどの経口ワクチン、日本では未承認ですがインフルエンザの点鼻ワクチンがあります)。

 あるワクチンを皮下注射でうつべきか、筋肉注射でうつべきか、という判断は、国際的にはとても簡単です。生ワクチン(麻疹や風疹ワクチンなど、病原体を弱毒化してつくられたワクチン)の場合は、皮下注射が原則。一方、不活化ワクチン(病原体を殺して毒性をなくし、免疫を活性化させる成分を抽出してつくったワクチン)の場合は筋肉注射をおこなう。これが世界的には“常識”です。

この記事は有料記事です。

残り1902文字(全文2476文字)

谷口恭

太融寺町谷口医院院長

たにぐち・やすし 1968年三重県上野市(現・伊賀市)生まれ。91年関西学院大学社会学部卒業。4年間の商社勤務を経た後、大阪市立大学医学部入学。研修医を終了後、タイ国のエイズホスピスで医療ボランティアに従事。同ホスピスでボランティア医師として活躍していた欧米の総合診療医(プライマリ・ケア医)に影響を受け、帰国後大阪市立大学医学部総合診療センターに所属。その後現職。大阪市立大学医学部附属病院総合診療センター非常勤講師、主にタイ国のエイズ孤児やエイズ患者を支援するNPO法人GINA(ジーナ)代表も務める。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。主な書籍に、「今そこにあるタイのエイズ日本のエイズ」(文芸社)、「偏差値40からの医学部再受験」(エール出版社)、「医学部六年間の真実」(エール出版社)など。太融寺町谷口医院ウェブサイト